手づくり二十四節気/清明せいめい

二十四節気と七十二候 2022.04.05

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春の雑草で野天ぷらを

草木が命を芽生えさせる清明の節気です。「万物ここに至って皆潔斎(けっさい)なり」。どこを見ても、生まれたばかりの初々しく若い緑が輝いています。

草や木の花も咲き始めました。足元にはヒメオドリコソウにホトケノザ、ミヤコグサ、キランソウなどの草の花。木には、コブシ、ユキヤナギ、ハナズオウ、ダンコウバイが花をつけています。皆いっせいに咲き始める寒冷地の自然の驚き。なんとも気持ちの良い季節となりました。

春の清らかで生き生きしたこの時季に、草を摘んで食すのはいかがでしょう。珍しい草でなくてよいのです。ごく親しみのある、どこにでも生えている雑草です。これを摘んで、天ぷらにして食べると極上の味わい。自分で調達してきた草を天ぷらのタネにする、なかなか贅沢ではありませんか。

この時季の草は、まだ芽吹いたばかり。柔らかくておいしさがみっちり詰まっています。ハコベやナズナは春の七草の仲間だし、食べられるとは思っていましたが、雑草のハルジオンが? スギナが? 本当に食べてもおいしいの? と最初は驚きましたが、驚くなかれ、本当においしいのです。もうずいぶん昔に、摘み草指南の方に教わって以来、春先の楽しみになっています。

せっかくだから、外で天ぷらをあげちゃいます。野天の天ぷら、すなわち野天ぷら。

雑草天ぷらは、どうも家の台所で揚げるいつもの天ぷらというよりは、野天で揚げるのが合っているようなのです。余興みたいな感じといえばいいでしょうか。天つゆも大根おろしもなし。塩をふるだけ。これで十分味わい深いのです。低山歩きで、キャンプ場で、あるいは河原のピクニックで。摘んですぐ揚げる、というのもおいしさの秘密かもしれません。

さいしょにハコベ、次はナズナ、それからカンゾウにハルジオン。アウトドア用の小さなガスストーブで次々揚げて、揚げたそばからハフハフサクサク食べ進みます。

雑草ばかりで飽きるようだったら、合いの手にニンジンやレンコンを揚げてもいいかもしれません。が、不思議と飽きないのです、雑草オンリーのパレードだけで。

今年の春の野天ぷら第1回は、一人で自宅の庭にて。裏の土手で摘んだ草を揚げました。山菜摘みだとちょっと敷居が高いですが、雑草摘みなら家の近くにも生えているので手軽です。街中にも普通に生えていますしね。

万物が生命を爆発させて育つこの時季、お天気のいい日に雑草の天ぷらはいかがでしょうか。春のパワーをチャージできること請け合いです。

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平野恵理子

イラストレーター、エッセイスト
1961年静岡県生まれ。著書に『五十八歳、山の家で猫と暮らす』『歳時記おしながき』『こんな、季節の味ばなし』ほか多数。好きな季節は、季節の変わり目。現在は八ヶ岳南麓在住。

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