春の雑草で野天ぷらを
草木が命を芽生えさせる清明の節気です。「万物ここに至って皆潔斎(けっさい)なり」。どこを見ても、生まれたばかりの初々しく若い緑が輝いています。

草や木の花も咲き始めました。足元にはヒメオドリコソウにホトケノザ、ミヤコグサ、キランソウなどの草の花。木には、コブシ、ユキヤナギ、ハナズオウ、ダンコウバイが花をつけています。皆いっせいに咲き始める寒冷地の自然の驚き。なんとも気持ちの良い季節となりました。

春の清らかで生き生きしたこの時季に、草を摘んで食すのはいかがでしょう。珍しい草でなくてよいのです。ごく親しみのある、どこにでも生えている雑草です。これを摘んで、天ぷらにして食べると極上の味わい。自分で調達してきた草を天ぷらのタネにする、なかなか贅沢ではありませんか。

この時季の草は、まだ芽吹いたばかり。柔らかくておいしさがみっちり詰まっています。ハコベやナズナは春の七草の仲間だし、食べられるとは思っていましたが、雑草のハルジオンが? スギナが? 本当に食べてもおいしいの? と最初は驚きましたが、驚くなかれ、本当においしいのです。もうずいぶん昔に、摘み草指南の方に教わって以来、春先の楽しみになっています。

せっかくだから、外で天ぷらをあげちゃいます。野天の天ぷら、すなわち野天ぷら。
雑草天ぷらは、どうも家の台所で揚げるいつもの天ぷらというよりは、野天で揚げるのが合っているようなのです。余興みたいな感じといえばいいでしょうか。天つゆも大根おろしもなし。塩をふるだけ。これで十分味わい深いのです。低山歩きで、キャンプ場で、あるいは河原のピクニックで。摘んですぐ揚げる、というのもおいしさの秘密かもしれません。

さいしょにハコベ、次はナズナ、それからカンゾウにハルジオン。アウトドア用の小さなガスストーブで次々揚げて、揚げたそばからハフハフサクサク食べ進みます。
雑草ばかりで飽きるようだったら、合いの手にニンジンやレンコンを揚げてもいいかもしれません。が、不思議と飽きないのです、雑草オンリーのパレードだけで。

今年の春の野天ぷら第1回は、一人で自宅の庭にて。裏の土手で摘んだ草を揚げました。山菜摘みだとちょっと敷居が高いですが、雑草摘みなら家の近くにも生えているので手軽です。街中にも普通に生えていますしね。
万物が生命を爆発させて育つこの時季、お天気のいい日に雑草の天ぷらはいかがでしょうか。春のパワーをチャージできること請け合いです。

平野恵理子
イラストレーター、エッセイスト
1961年静岡県生まれ。著書に『五十八歳、山の家で猫と暮らす』『歳時記おしながき』『こんな、季節の味ばなし』ほか多数。好きな季節は、季節の変わり目。現在は八ヶ岳南麓在住。
暦生活のお店
-
書籍「日本を味わう 366日の旬のもの図鑑」
2,860円(税260円) -
京の音「聴色(ゆるしいろ)」 / 染料インク
2,200円(税200円) -
京の音「青碧(せいへき)」 / 染料インク
2,200円(税200円) -
書籍「手づくり二十四節気」
1,760円(税160円) -
Fonte ガラスペン
1,155円(税105円) -
Fonte 筆ペン
1,155円(税105円) -
注染手ぬぐい「貝合わせ雛」 / かまわぬ
1,320円(税120円) -
注染手ぬぐい「つるし雛 生成」 / かまわぬ
1,320円(税120円) -
注染手ぬぐい「板チョコ」 / かまわぬ
1,100円(税100円) -
注染手ぬぐい「コーヒー豆 チョコビーンズ」 / かまわぬ
1,320円(税120円) -
注染手ぬぐい「弁慶縞 チョコレート」 / かまわぬ
1,650円(税150円) -
玄米リラックスアイピロー
2,530円(税230円) -
玄米リラックスねこピロー
2,530円(税230円) -
注染手ぬぐい「snow dome」 / にじゆら
1,210円(税110円) -
ギフトラッピング【2023年】俳句の日めくりカレンダー / 限定スタンド付
2,420円(税220円)