菖蒲と書いて、あやめと読むのでややこしいのですが、七十二候の「菖蒲華(あやめはなさく)」はアヤメのことです。
アヤメ科アヤメ属の花は種類が多く、文目(あやめ)、燕子花(かきつばた)、花菖蒲(はなしょうぶ)、最近はジャーマンアイリスなどもよくみかけます。「いずれ菖蒲(あやめ)か杜若(かきつばた)」は甲乙つけがたいことのたとえ。いちばん最初に咲くのは一初(いちはつ)で、花の基部に鶏冠状の白い突起があります。小ぶりで日陰を好む著莪(しゃが)もアヤメ科。カラフルでおおぶりなジャーマンアイリスも早く咲く品種で、黄色やオレンジのブラシ状の突起があります。




そして水辺に咲くのはカキツバタ。杜若、燕子花とも書き、咲いている場所と、紫の花の基部に一本の白筋があるのですぐに見分けがつきます。なんとも美しい紫ですね。尾形光琳の『燕子花屏風図』でよく知られるように水辺の花です。

ちょうど燕子花が咲く頃、ツバメの子が巣立って空を泳ぎ始めます。垂れ下がった花の様子とツバメの姿を重ねた美しい表現で、まさに季節感がよくわかります。ツバメをよく観察してみると、ツバメの羽はコバルトのような青や紫にキラッと光っています。昔の人はこの辺りも重ね合わせ、カキツバタに燕子花の字をあてたのでしょう。


一方、紫の花弁の基部にはっきり網目模様がみえるのがアヤメです。菖蒲と書いてあやめと読むのでわかりづらいのですが、語源は文目、綾目です。


今、山の中に咲いているのはアヤメ、もしくは花菖蒲の原種であるノハナショウブ(野花菖蒲)のどちらかで、楚々とした野生の姿もいいものです。

花菖蒲は江戸時代に改良された園芸品種で、色はさまざまですが、ノハナショウブ(野花菖蒲)を原種とするため、花の基部に黄色がみえます。いちばん最後まで咲いているのはこの栽培品種の花菖蒲(はなしょうぶ)で、今の季節は花菖蒲が多くなります。花菖蒲は野生のノハナショウブから作られた江戸時代の園芸品種ですので、その数は数千種にも及びます。色も紫だけでなく、白や黄、青、ピンクなどさまざま。水に浸っているのは苦手で日照りを好みます。花びらの基部に黄色がみえるのが花菖蒲です。

梅雨を彩るアヤメ科の花たち。アヤメ科の花はいずれも同じように垂れ下がる花びらと、屋根のようにめくれあがった花びらがあって、中央が複雑に隠された不思議な形をしています。
アヤメ科の花たちは雨が降っても花芯が濡れないようなかたちに進化したと考えられています。かぶさるように立ち上がった花びらだけでなく、その中にも花芯を守る小さな花びらがあり、花蜂がもぐりこむとちょうど背中に花粉がつく、奥の深いトンネルのようになっています。

垂れ下がった花びらは訪れる虫が発着するためのタラップで、文目模様や白い線は蜜の在り処へと導くための目印、蜜標です。アヤメ科の花は花蜂たちを受粉者に選んで進化してきたのです。
紫と緑の組み合わせは雨にもっとも映える色合わせ。雨に濡れると一層鮮やかになり、目にしみるような美しさです。曇りの日や雨の日にいちばん輝いてみえる紫の花には、しっとりとした梅雨の日本を圧倒的に美しくする強さがあるようにおもいます。

ところで、端午の節句に使われるショウブは水辺に生えるサトイモ科ショウブ属の植物。刀のような鋭い葉には邪気を払う力があるとされ、お湯に入れると香りとともに油が浮いてきますが、これが薬効のある精油成分で、「菖蒲湯」の風習があります。
私の田んぼでも水路に生えるショウブを大切にしています。ショウブの葉は夏になっても青々として美しく、カエルたちも大好きなようで、ちょこんと葉につかまっているのがおなじみの光景です。
ショウブの花は地味な黄土色の花穂です。地味なので鑑賞されることはありませんが、ちょうど田の草取りをする今の季節、葉の根元あたりをよくみると、ひっそりと咲いています。

文責・高月美樹
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