夏のトウモロコシ三昧
小暑になりました。いよいよ暑中ですね。今年も暑中に入る前から猛暑が続いていました。うっかりすると暑中見舞いを出してしまいそうな暑さでしたから。今ならもう胸を張って、暑中お見舞いを申し上げられますね。
さて、夏もおいしいものがたくさんあります。ナスにキュウリにトマトの三大夏野菜を始め、スイカにメロンにモモ、とみずみずしい果物もうれしい味です。もうひとつ、夏ならではの、明るく元気いっぱいで食べられるものといえば、トウモロコシ。
季語でいうと、トウモロコシの花は夏、実は秋に分類されるようですが、感覚としては夏の食べ物です。作物のとれる季節がどんどん前倒しになっている影響もあるかもしれません。
そうはいっても、夏祭りの屋台に焼きとうもろこしがなかったら。やはりお祭りの気分も、今ひとつ盛り上がらないことでしょう。
七十二候でいくと、小暑の初侯は「温風至(あつかぜいたる)」、次候が「蓮始開(はすはじめてひらく)」ですが、このあたりをアレンジして、小暑の次候は「唐黍実(とうきびみのる)」などに変更してもらいたいものと思います。そうすれば、秋を待たなくても威張って思う存分トウモロコシを食べられるというものです。そう願いたい。トウモロコシファンとしては。
南米など、地域によっては主食にしている人々もいるくらいで、穀物であるトウモロコシは重要な作物です。日本では主食の地位は得られませんでしたが、夏の野菜売り場ではいい位置にしっかりエントリーしています。
トウモロコシのいいところは、茹でるだけでおやつとしてそのまま食べられるところ。またお料理にも八面六臂の大活躍を見せてれるのも魅力です。ハッピー・イエローの粒々は食欲をそそりますし、見た目の愛嬌もたっぷり。
いざ調理をというときは、まず床に新聞紙を広げます。厳かな気持ちで、実を包んで守っている何枚もの皮を、そろりそろりと剥いでいきます。この作業は、心はずむ夏の台所仕事のひとつ。皮がとれてくると、真新しいツヤツヤの可愛らしい実が現れます。粒々たちは、お行儀よくみっしり並んで笑っているよう。
さあ、今日は君たちをどう料理してくれよう。
この夏は、何本のトウモロコシを食べることになるでしょうか。粒々なので、細かく刻む手間もありません。オリジナルのお料理など考案して、愛ある夏のコーン・ライフを!!
平野恵理子
イラストレーター、エッセイスト
1961年静岡県生まれ。著書に『五十八歳、山の家で猫と暮らす』『歳時記おしながき』『こんな、季節の味ばなし』ほか多数。好きな季節は、季節の変わり目。現在は八ヶ岳南麓在住。
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