夏になると、夕方の空にどこからともなく集まってきた無数の燕が乱舞している姿をよくみかけるようになります。スイスイと空を泳ぐように自在に飛び回り、急降下したり、急旋回したり。長い旅路に備えて、懸命に飛行訓練をしているようにもみえます。

子育てを終えると燕たちは次第に大きな群れを作って、集団ねぐらで眠るようになります。私は毎年、高速道路のサービスエリアで、燕の大集団に出会います。夕方の空をごま塩のように埋め尽くす光景は壮観で、人々もみな空を見上げて、わあ、すごいなあ、と眺めています。
人間にとってもトイレや食事に必要なサービスエリアですが、燕にとっても都合のよい中継地になっているのでしょう。そもそも人の出入りが多いサービスエリアは営巣の場所として選ばれることも多いので、巣立ったあとはすでに小さな集団になっていますし、周辺に芒原(すすきはら)などのねぐらがあって、燕も集まってくるのではないかとおもいます。
春は単独飛行で、一羽ずつ海面すれすれを飛んでくる燕たちですが、帰りは子燕を連れて、数千から数万羽の集団で飛んでゆく燕たち。集団で大きく旋回しながら、みえなくなるほど高く舞い上がり、南へ移動していきます。

燕が渡りに必要とするのは、敵におそわれる心配がなく、えさ場でもある河川敷や湿地の葦原(あしはら)です。日本は「葦原の瑞穂の国」とよばれますが、葦原は燕たちにとってなくてはならない大事なお宿。近年は葦原が減少し、ねぐら不足が心配されています。

近ごろは街路樹や竹やぶなどもねぐらとして使われているようです。燕のねぐらのために葦原を復活させた名古屋の細口池では、十年ぶりに燕の大群が戻ってきたそうです。
旅の途中、集団で眠れるような場所は限られているため、この頃にみる大集団は、同じ場所でも集団が次々と入れ替わっています。
ねぐらにはこれから1ヶ月くらいかけて、次々に集団が通っていくことになりますが、体力のある親鳥たちが先に飛び立ち、幼鳥たちは渡りの後半になることが多いようです。

七十二候では「玄鳥去る」となり、「帰燕」「燕帰る」「秋燕」などがこの季節の季語です。旧暦では今が葉月ですが、葉月は「燕去月(つばめさりづき)」ともいいます。燕の渡りには、天候も関係するようです。天敵に弱い燕たちは、狙われることがないように、あえて雲におおわれた天候の悪い日を選び、小雨が降っていても、たくましく飛んでいきます。

燕はどこでも毎年見られるように思いますが、ここ数十年で大幅に減少してきているのだそうです。燕は人を信頼し、人と共生することを選んだ鳥。人と自然が混じり合う燕の好む環境は、人間にとってもいちばん幸福な環境なのではないかとおもいます。

文責・高月美樹
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