二十四節気は冬至を迎えました。
冬至の初候は「乃東生(なつかれくさしょうず)」で、12月22〜26日頃。ちょうど半年前の夏至の初候「乃東枯(なつかれくさかるる)」(6月21〜25日頃)と対になっている一候です。

乃東は以前にも書きましたように、夏枯草(かこそう)と呼ばれる薬草で、枯れて茶色くなった穂が矢入れの靭(うつぼ)に似ていることから、ウツボグサ(靭草)と呼ばれています。「生ず」というと、まるで芽を出すかのように思われがちですが、ウツボグサはじつは多年草なので、冬の間、小さくはなっていますが、完全に枯れているわけではありません。地面を這うように緑の葉を広げているロゼット植物のひとつです。

ロゼット植物とはバラの花のように放射状に葉を広げている植物のことで、冬越しの植物に多く見られます。ロゼットは冬の寒さや雪風に耐えるための形であり、踏まれてもへこたれないための丈夫な作りであり、冬の陽射しを効率よく受けるための巧みな形状です。


ウツボグサに限らず、ロゼット植物はたくさんありますので、ちょっと地面を探してみてください。背の高い他の草に邪魔されない、日当たりがよい場所を好むので、都会の道端に生える雑草の多くがロゼットです。
ウツボグサはもちろん種から発芽させることもできますが、その場合は2月か3月頃に種を蒔きます。面白いことに種の多くは寒さを経験することで、初めて芽吹くことができる精巧な設計プログラムを持っています。

もし種が水や温度などの条件だけで発芽してしまうのであれば、実になった年の秋には発芽することになり、肝心の冬を越せなくなってしまうので、寒さを越えたときに初めて発芽するように設定されているのです。
冬の語源は、この種の姿でもあります。「殖ゆ」「振ゆ」「震(ふる)う」などと関係し、閉蔵された種子が発動する、かすかに振動を始める、という意味があります。はっきりと目にはみえるものは何もありませんが、冬至を境に日が伸びていくことを地中に眠る種が感じとり、発芽に向けたスイッチが入っている。そんなイメージです。
干支の十二支は動物になぞらえられますが、元々は草木の一年の様子、自然界のサイクルを見事に表していました。十月から一月をご紹介しますと、こんな感じです。
十月(現在の11月)は亥(ガイ)で、草木が枯れ果て、種子が閉蔵される月。
十一月(現在の12月)は子(シ)で、種子の中に新しい命が生じる月。
十二月(現在の1月)は丑(チュウ)で、萌芽が生じるが、伸び切れない月。
一月(現在の2月)は寅(イン)で、草木が発生する月です。

いかがでしょうか。2月になれば、オオイヌノフグリなど、大地のくさぐさは一斉に芽吹き、小さな花を懸命に咲かせています。
また冬至を迎える旧暦の霜月には神楽を奉じて「魂振(たまふ)り」をすることから、神楽月(かぐらづき)という別名があります。御隠れになった天照大神が天の岩戸を開いて、再び太陽が輝くようになったという神話を再現することで太陽の復活を祝ったり、来年の豊作を願ったり、再びめぐる季節を想起し、予祝したりする意味合いがありました。

そのため、霜月や冬至のことを「一陽来復」といったりします。陰極まれば、陽に転ず。「一陽来復」は厳しい事が続いたあとに幸運が開けることのたとえとしてもよく使われていますが、冬至に限らず、夏の暑さも極まれば必ず衰え、季節はつねに「生と死」を繰り返しています。
冬至はいわば「死」であると同時に「生」の瞬間でもあります。時間でいえば、ちょうど午前零時、真夜中に相当します。真夜中に次の日が来たと思わないのと同じで、空が明るみ始めてようやく新しい日が始まった、と思うのが、季節でいう春です。

海洋性気候の日本は大陸よりもゆっくりと寒くなり、ゆっくりと暖かくなりますので、本格的な大地の冷え込みはむしろこれからですが、それでも冬至という峠を過ぎれば、やはり来年への希望を感じ始める。種が内側に発動した力を溜めて、いつか発芽するように、これからは力を溜めたり、増やしたりしていく季節に入ります。植物の動きに倣うならば、そっと心を養い、内側の充実を計る感じでしょうか。

冬至といえば柚子なので、最後におすすめの柚子酒のご紹介です。米、水、麹のみの純米生酛作りにこだわっている土田酒造さんの絶品に美味しい柚子酒です。私が通っている川場村の田んぼの近くにあるので、毎回立ち寄っています。濃厚で香り豊か、お酒の弱い方でも飲める優しいお味。ご興味ある方はお試しください。

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