七十二侯は「蛙始鳴(かわずはじめてなく)」を迎えました。カエルが鳴きはじめ、元気に動き回るころ。立夏を迎えましたので、蛙は夏の季語になります。
いよいよ田植えの準備が始まり、代掻き(しろかき)や畦塗り(あぜぬり)の季節に入りました。田んぼに水が引かれると冬眠からめざめたカエルたちは早速、卵を産みにやってきます。そしてちょうど田植えの頃になると孵化して、田んぼの中は元気に泳ぎ回るおたまじゃくしでいっぱいになります。

蝌蚪
おたまじゃくしというと長いので、俳句の世界では蝌蚪(かと)と2文字で表現します。長いぬるぬるした帯状の卵のことは「蝌蚪の紐」または「数珠子(じゅずこ)」といいます。

田植えの準備に入る今の季節、カエルとの久しぶりの邂逅も毎年の楽しみのひとつです。カエルを見かけると「お母さんがんばって」と声をかけたいような気持ちになります。なにしろカエルの多くは大人になる前に食べられてしまい、生き延びて冬を越したカエルはごくわずか。運のよかったカエルたちです。
雨蛙
いちばん多いのはやはりニホンアマガエルです。カエルが嫌いでも、この小さなアマガエルを気持ち悪いと思う人はほとんどいないのではないでしょうか。

アマガエルは本当に雨が降り出す直前に鳴きだすので、名前の通り、雨を知らせる蛙です。「かえるのうたがきこえてくるよ」の歌い出しで有名な『かえるの合唱』はドイツ国家を作った童謡作家、ホフマン・ファラースレーベンの作品で、1930年に日本語に翻訳され、輪唱教育音楽として広まったものだそうです。
子供時代、少しずつずらして歌い出し、だんだん重なって大合唱になっていく輪唱は、なんとも楽しいものでしたが、実際に田んぼに佇んでいると、本当にその通りで、最初の一匹が鳴き出すと、呼応するように鳴き出す蛙がいます。そして三匹目、四匹目と、あちこちから声が聞こえ始め、合唱になっていきます。蛙は自分はここにいるよとアピールするために、ちゃんと相手の声を聴き、重ならないように、必ずずらして鳴いています。
青蛙

ほかにヤマアカガエルやシュレーゲルアオガエルも田んぼに住む仲間たちです。畦塗りをしているときにいつも楽しみにしているのが、シュレーゲルアオガエルの真っ白な卵のうの発見です。


芹の生える水際にぷかぷか浮いていたり、鍬を入れた土の中からポコンっと出てくることもあります。アマガエルはたくさんいますが、シュレーゲルの数は少ないので、今年も元気に卵を産んでくれたなとうれしくなります。

シュレーゲルアオガエルは大変美しいカエルで、カエル好きにも大人気。年々減少し、絶滅危惧種に指定されているところもあります。みなさんよくご存知のニホンアマガエルより大きく、まぶたは鮮やかなゴールド。アマガエルのように黒いアイラインがないことが見分けポイントです。まさに全身が緑です。

アマガエルの鳴き声はクワクワ、ケッケッですが、シュレーゲルアオガエルの鳴き声の方がコロロ、コロロロと細くきれいな声です。シュレーゲルという外来種のような名前がつけられていますが、日本の固有種です。動物学者のヘルマン・シュレーゲル氏の名前がつけられていますが、これぞ日本の青蛙なのです。学術的にいうとニホンアマガエルはアマガエル科、シュレーゲルアオガエルとモリアオガエルがアオガエル科です。

※七十二候(しちじゅうにこう)は、日本の1年を72等分し、季節それぞれのできごとをそのまま名前にした、約5日ごとに移ろう細やかな季節です。
文責・高月美樹
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