二十四節気と暮らしの道具/春分しゅんぶん

二十四節気と七十二候 2024.03.20

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春分 3月20日~4月3日 二月中〈日天の中を行きて昼夜等分の時なり『暦便覧』〉

黒文字を用意して、春のお菓子をいただく

春分となりました。この日は春彼岸のお中日でもあります。

春分は、暦でいえば春の真ん中。この日は太陽が真東から昇って真西に沈む、天文学的にも大きな節目です。日が真西に沈むところから、この方角にある極楽浄土を拝むことが平安末期には熱心に行われたといわれます。これが現代も人々がお彼岸にお墓参りをすることにつながっているようです。

昼と夜の時間がほぼ同じ春分を境に、夏至まではさらに昼のほうが長くなっていきます。春らしさも本格的になるころですね。春の日差しの中を、お墓参りへ行くもよし。野に出たり、あるいは水辺に出かけたりして行楽をするもよし。春を存分に体感したいところです。

春分の七十二候をのぞいてみると、初候は「雀始巣(すずめはじめてすくう)」、次候は「桜始開(さくらはじめてひらく)」、そして末候が「雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)」。鳥も草木も、そして天空までもがにぎやかに春の訪れを謳歌しているようではないですか。

お墓参りへ出かけるならぼた餅をお供えに、野山へ出るならほかのお菓子でもいいので、春の和菓子を持っていくのはどうでしょう。和菓子は、季節を表すことにかけては無敵です。和菓子屋さんを訪ねて季節のお菓子を選ぶことは、大いなる楽しみ。上生菓子に、餅菓子、お干菓子と、どのお菓子にも季節が盛り込まれています。

この時期ならぼた餅も、粒あん、こしあん、きな粉や胡麻、と種類も揃っていることでしょう。同じ餅菓子でも、求肥のうさぎまんや薄皮の桜餅、うぐいす餅もありそうです。どれも、見た目だけでも春が溢れるようで、幸せを感じます。

和菓子をいただくときに使いたいのが黒文字の楊枝です。香りのいい落葉低木クロモジの材からつくったもの。濃い色の樹皮をいかして削ってあり、簡単なものですが、風情と存在感があります。三寸、五寸、六寸、などサイズも豊富で、常備しておくととても便利。青空の下でお菓子を食べるときも、お懐紙と黒文字を携行すれば完璧ですね。

お茶会で使った黒文字は、懐紙に包んで持って帰り、清めたあとは裏にお茶会の場所や日付を書き込んで手箱にしまっておく、と聞いて、いいものだなあと思いました。一時期お茶会に出ていたころは、これにならっていたので黒文字がかなり集まりました。

お茶会などでは一度しか使わないものですが、我が家では和菓子を食べるときのほかにも、果物やケーキを食べるときにも使うので、使用頻度がとても高い。そんなわけで、自分で使う分に限っては、洗って拭いて乾かして、何度でも使っています。

もちろん、お客様にお出しするには新しいものを 。
自然の木をただ削っただけの楊枝は、使う前にしばらく水に浸けておくと、反っているのも直せるし、お菓子が楊枝につくのも防げます。水気を拭き取ってお出しすれば、しっとりとして手触りもよくなって、目には見えないけれど、ささやかなおもてなしということでしょうか。

さて、季節の和菓子は、その季節を逃すとまた一年間食べられなくなってしまいます。春のお菓子を食べ損なわないように、急げやいそげ。

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平野恵理子

イラストレーター、エッセイスト
1961年静岡県生まれ。著書に『五十八歳、山の家で猫と暮らす』『歳時記おしながき』『こんな、季節の味ばなし』ほか多数。好きな季節は、季節の変わり目。現在は八ヶ岳南麓在住。

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