タンポポ

旬のもの 2020.03.23

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こんにちは。俳人の森乃おとです。

日本でもっとも名前が知られている野の花といえば、タンポポではないでしょうか? 
幸福な黄金色の花は春の化身のようで、花が終わった後の白い綿毛をそうっと吹けば、一緒に旅をしたいような思いを誘われます。

「タンポポ」という名前の謎

学名の「Taraxacum タラクサクム」は「苦い草」で、これは食べてみればすぐにわかります。英語名の「dandelion ダンデライオン」は「ライオンの歯」という意味で、ノコギリのように切れ込んだ葉の形に由来します。

一方、「タンポポ」という名前は、いつ、どういう理由でつけられたのか、まだ定説がありません。

タンポポという呼び名が文献に初めて登場するのは、15世紀。江戸時代以前ではわずか3例だけです。ところが江戸時代に入ると、タンポポは突然、大人気の花になります。俳句で盛んに詠まれ、タンポポ園芸熱が高まり、赤や黒、青い色のタンポポがつくりだされます。タンポポという、一度聞いたら忘れられない名前が、江戸時代に急速に普及し、タンポポブームを引き起こしたと思われます。

名前の由来については、打楽器の鼓(つづみ)の音から生まれたという、民俗学者の柳田国男の説が有力です。タンポポの形が鼓に似ているためで、「タン」が鼓を打つ音、「ポポ」はその余韻というわけです。

柳田国男は、「タンポポ」という名前を最初につけたのは「子ども」だと推測していますが、なるほど、とても可愛く子どもらしい響きです。

たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ

現代の俳人、坪内稔典(つぼうち・ねんてん)氏の句。やはり「タンポポ」の「ポポ」が気になったのでしょうか。

日本はタンポポの王国

タンポポはキク科タンポポ属の植物の総称で、北半球に広く分布しています。その中でも日本は世界5大産地のひとつとされています。タンポポ属は、クローンでふえるのが一般的ですが、日本には有性生殖でふえるタンポポが普通に存在し、珍しい白花のタンポポがあることなどがその理由です。

日本にあるタンポポは、古くから存在する在来種と、明治時代に外国から入ってきた外来種のセイヨウタンポポとに大別されます。本州でよく見られるカントウタンポポやカンサイタンポポなどは有性生殖、北海道・東北のエゾタンポポ、西日本のシロバナタンポポなどはクローンでふえる種類です。セイヨウタンポポもクローンでふえます。

近年、在来タンポポが減る一方で、セイヨウタンポポが急速にふえていることが心配されています。市民参加の「タンポポ調査」が各地で行なわれた結果、在来タンポポの減少は、都市化が急速に進んだことが原因で、セイヨウタンポポに駆逐された結果ではないことが明らかになってきました。

セイヨウタンポポがあるおかげで、私たちはタンポポを失わずにいられる、ともいえるかもしれません。

タンポポの花言葉

タンポポの花言葉は「真実の愛」「愛の神託」「神のお告げ」「思わせぶり」。

「愛の神託」「神託」の花言葉は、古くからヨーロッパでは、タンポポの綿毛で恋占いをしていたことに由来します。 それは、「好き、嫌い、好き…」と交互に唱えながら綿毛を吹き、思い人の愛情の深さを占うというもの。

一息ですべての綿毛を飛ばすことができれば「情熱的に愛されている」、いくつか残れば「多少の不誠実」、たくさん残れば「無関心」を示すのだとか。「思わせぶり」の花言葉も、うなずけます。ちなみに綿毛の花言葉は「別離」です。

タンポポ 蒲公英 
学名 Taraxacum
英語名 dandelion
キク科タンポポ属の多年草の総称。北半球を中心に広く分布。花の色は黄、まれに白。1枚の花びらのように見えるものは独立した1個の花。

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森乃おと

俳人
広島県福山市出身。野にある草花や歳時記をこよなく愛好する。好きな季節は、緑が育まれる青い梅雨。そして豊かに結実する秋。著書に「草の辞典」「七十二候のゆうるり歳時記手帖」。「絶滅生物図誌」では文章を担当。2020年3月に「たんぽぽの秘密」を刊行予定。(すべて雷鳥社刊)

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