こんにちは。料理人の庄本彩美です。今日はアスパラガスのお話です。
春は出会いの季節。新たなスタートに期待を寄せる人も多いだろう。
そんな私は数年前、春の北海道で思いがけない出会いがあった。
札幌に住む友人の家へ泊まらせてもらい、その日は私がご飯を作ることになった。
春の北海道の食材とは初めてのご対面。
「美味しい野菜は、ほとんど道内で消費されるんだよ」
という友人の言葉に、エコバッグを揺らしながらスーパーに向かった。

春の気配はあるものの、日陰には雪が残っていて寒い。
なるべく日の当たる場所を探しながら歩いた。道端には蕗の薹があちこちに、芽吹くどころか生い茂っている。やっと、、やっと春が来ました!!と言わんばかりの量と成長っぷりだ。
意気揚々とスーパーに入ると、目の前の光景に私は目を疑った。
緑のアスパラガスが、平積みされていたのだ。しかも店の入り口で。アスパラガスに出迎えられたことなんて一度もないぞ!?
そして驚くべきはその大きさ。
ずんぐりとした茎が先端まで伸びている。品種にもよるのだろうが、その太さと重さは、明らかに私が知っているものと違う。
美しい正三角形のハカマと、それが天に向かって集まってできた穂先は、何か大切なものを包んでいるかのよう。
横には白と紫色のアスパラガスが同じく鎮座していた。
ちなみにこの日私が見たのはハウス物だったが、露地物が出始めるころには、平積みどころかコンテナ積みになると後から聞いた。
ショーケースの隅の方で、しおれ気味に並ぶものしか見たことがない私には、なんとも衝撃的。

家へ戻り、キッチンでアスパラガスを両手に持って、固い根元をポキっと折った。新鮮な音がする。
実家の庭で生えてくるアスパラガスは、つくしの様に細い。スジを取ろうともすれば、食べられる部分なんて殆ど無くなってしまう。
それなのに、このアスパラガスはスジをとっても肉厚。
思わず「おおーっ」っと、拍手を送ってしまった。
冷蔵庫からベーコンを拝借して「アスパラとベーコンのアーリオ・オーリオ」が出来上がった。
アスパラガスをフォークで刺すと、サクッと感触が手に伝わってくる。
噛むとシャキッと音を立て、歯触りが気持ちいい。
そして、これまでに感じたことのない瑞々しさと甘さに、まるで瞳孔がひらいたかの様だった。

北海道のアスパラガスは、冬の残りと春の訪れを交互に経験しながら、甘みを深める。採れたてだと水が滴るほど新鮮なんだそう。
そんな北の大地の恵みをたっぷりふくんだ味は「アスパラガスとはこういうもの」という思い込みを塗り替えてくれる出会いだった。
それから旅行へ行く時は、その地で育つ野菜や食材との出会いも楽しみとなった。
気持ちのいい季節になってきた。この時期にはあのアスパラガスをつい思い出してしまう。
今年も行きたいなと、 各地の美味しいものを妄想しては心を踊らせている。

庄本彩美
料理家・「円卓」主宰
山口県出身、京都府在住。好きな季節は初夏。自分が生まれた季節なので。看護師の経験を経て、料理への関心を深める。京都で「料理から季節を感じて暮らす」をコンセプトに、お弁当作成やケータリング、味噌作りなど手しごとの会を行う。野菜の力を引き出すような料理を心がけています。
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