コブシ

旬のもの 2020.03.29

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こんにちは。ライターの松下恭子といいます。

1年の中で一番好きな季節は「春」なので、今回春の花について書かせてもらうことになりうれしく思います。
この記事を通して、読んでくれた方に少しでも春の楽しみが広がるといいなぁという気持ちで書きました。
よろしくお願いします。

雪が解け、まだ木々が花をつけない冬枯れの季節に春の訪れをいちはやく告げる花があります。
それは、モクレン科の「コブシ」です。

コブシは、春を代表する「ウメ」「サクラ」などの明るい色で染める華やかさとは違って、控えめに純白で清純な花を咲かせます。

3月から5月にかけて、高さ18m、幹の直径は60cmもの大木になるコブシは、枝先に直径6-10cmの花を咲かせます。開花と同時に花の下に小さな葉っぱがつくことが、見た目の大きな特徴です。

遠目から見ると、サクラに似ていますが、この葉っぱがあるかないかで、他の植物との見分けをつけることができます。

コブシの名前の由来は、「袋果(たいか)」からきています。
コブシは、花の時期が終わるとさくらんぼのような大きな果実をつけるのですが、雌しべが多数あることからこのようなかたちになり、受粉を終えると子房の部分が球形に大きくなり1個の丸い果実となります。

この様子が子どものにぎりこぶしのように見えることから、コブシと呼ばれるようになりました。

袋果が集まることを「集合果」と言いますが、サクラやウメの花には雌しべが1本しかありませんので、集合果はモクレン科に共通する特徴です。

コブシは別名、「田打ち桜」とも呼ばれ、田んぼの神様の依り代として大切にされてきました。
コブシが咲くころに田植えをはじめたり、花の向きから豊作になるかどうかを占ったりもしていたそうです。

また、コブシが咲いたことを合図に野菜の植え付け、みそ・しょうゆの仕込みに取りかかかったとも言われています。

このエピソードからも、いかにコブシが田園風景の中で成長し、農家の人々と深く寄り添ってきた花であるかということをうかがい知ることができます。
また、花びらからは柑橘系の香りがほのかにしますので香料の原料としても使われてきました。樹皮からは油、種からは染料、花の蕾は漢方薬と、資源豊かな万能植物として活用されてきました。

まだ風が冷たい季節に、色んな人々の思いを背負って野山に一斉に花を咲かせるコブシ。
花びらがばらばらと色んな方向を向いて咲くからなのか、ひとつひとつの花が小さな意志をもって、大空に向かって伸び伸びと両手をいっぱいひろげているようにも見えます。

細くて小ぶり、華奢な花びらでありながら、力強いたくましさや生命力を感じるコブシの花。それは、天の恵みに「ありがとう」の気持ちを込めて、1年の豊作や健康を願っているかのようにも見えます。

梅や桜ほど人を集める豪華さはないものの、控えめな健気さが結集し、一斉に白い花で野山を染める姿は圧巻です。

今年はコブシの木の下で上品な香りに包まれながら昔の人々の暮らしに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
いつもとは違う春の景色を見せてくれるかもしれませんね。

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松下恭子

ライター
神奈川県出身、2019年に奈良市へ移住。
好きな季節は、春。梅や桜が咲いて外を散歩するのが楽しくなることと、誕生日が3月なので、毎年春を迎えることがうれしくて待ち遠しいです。好きなものは、うつわ集め、あんこ(特に豆大福!)です。

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