こんにちは、料理人の庄本彩美です。今日はこごみのお話です。
めっきり春らしくなり、スーパーに山菜がたくさん並ぶようになってきた。食卓が春の味で彩られると、冬に縮こまった体も心もほぐれていき、外へ出ようという気分にさせてくれる。
様々な種類がある山菜の中でも、私が好きなのは採れたての「こごみ」だ。
アクがなくて料理がしやすく、やわらかい若芽に春らしさを感じる。
丸くかがみ込むように生え、こごんで(屈んで)いるような様子から「こごみ」と呼ばれるそうで、その由来も可愛らしい。
初めてこごみと出会ったのは、数年前のゴールデンウィークに行った春の花を巡る山登りツアーの時。
初日は新潟の佐渡島へ。一緒に行った会社の先輩は百名山を制覇していて山に詳しく「花の佐渡島」の植物たちについて色々教えてくれた。春の妖精(スプリング・フェラメル)とよばれるキクザキイチゲや、うつむく姿が可憐なカタクリの花を見つけて、2人で盛り上がりながら山歩きを楽しんだ。

次の日は長野の妙高高原の水芭蕉を見に。
道のりの途中、すっかり雪が溶けた緑のゲレンデを横切っていた時のこと。妙高山のふもとは、春と初夏が混じったような穏やかな空気をまとっている。深呼吸して景色を眺めていると、先輩が「あっ」と駆け出した。何事かと見ていると、草むらにかがみ込んだ先輩にひらひらと手招きをされた。
「これ知ってる?こごみやで」
近寄って見てみると、ゼンマイのように先端が渦を巻いた若芽が、それぞれ向かい合って土から頭を出している。つやつやした鮮やかな緑色だ。
「さっと湯がくだけで食べられるで。こごみは群生するから、見て。あっちにも、こっちにもあるよ!」
よくよく見渡すと、ゲレンデのあたり一面にこごみが生えている…!
これはどんな味がするんだろう、料理は何が合うんだろうか…と、私の頭の中はすっかり食べることでいっぱいに。
「春の花」を楽しむツアーのはずだったのに、私のこの旅一番の思い出はこの食べられる「こごみ畑」になってしまったのだった。

散策の後に山菜の御膳をいただいた。その中には新鮮なこごみの胡麻和えもあった。
優しい粘り気と柔らかな若芽を口の中で感じる。味もくせがなくて、どんな料理にも合いそうだ。あく抜きがいらないなら、天ぷらも美味しいだろう。

こごみのようなシダ植物は、何億年も前から地球にあって、厳しい気象条件を耐え抜いてきた「生きた化石」と呼ばれるんだと、こごみを食べながら先輩が教えてくれた。
形を変えることなく現代まで命を繋いできたこごみ。昔の人も、同じようにこごみを食べて春の目覚めを感じてきたのだろうかと、思いを馳せたのだった。

庄本彩美
料理家・「円卓」主宰
山口県出身、京都府在住。好きな季節は初夏。自分が生まれた季節なので。看護師の経験を経て、料理への関心を深める。京都で「料理から季節を感じて暮らす」をコンセプトに、お弁当作成やケータリング、味噌作りなど手しごとの会を行う。野菜の力を引き出すような料理を心がけています。
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