新茶しんちゃ

旬のもの 2020.05.09

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こんにちは。ライターの高根恭子といいます。

暮らしの中で「お茶をいれること」は私にとって大切な習慣です。急須にお茶の葉を入れ、お湯を注ぐ。ゆっくり煮出された茶葉はほのかに色づき、柔らかな湯気とともに身体に染みわたり、気持ちをほぐしてくれる。

一人で飲むときも、おやつを囲みながらみんなで飲むときも、
お茶はほんのひととき安らぎの時間を運んでくれます。
すごろくで言う「いっかいやすみ」のように、忙しい毎日の中で立ち止まるきっかけを与えてくれる。特に最近は家にいることも多くなったのでお茶を飲む時間が増えました。色々な情報で疲れた頭をいちどスリープ状態にして、お茶を飲みながらゆっくり深呼吸をする。よりいっそう尊い時間になっています。

お茶の種類は色々あって、煎茶、ほうじ茶、玄米茶…
そのときの気分によって選んでいますが、中でも特に楽しみにしているのが、五月上旬に出回る『新茶』です。
この時期だからこそ味わえる旬のもので、味と香りは格別。その年の新茶を飲むたびに「日本人に生まれてよかった…」と喜びを感じます。

そもそも新茶とは、春から夏の時期に新芽を摘み取ってつくられるお茶のこと。立春から数えて八十八日目にあたる八十八夜に旬を迎え、昔から「不老長寿の縁起物」として重宝されてきました。
新茶は冬の間、寒さに耐え根や葉に栄養をしっかり蓄えます。あたたかくなるにつれて、ゆっくり、じっくり、蓄えた栄養が枝の先端へ送られるので、芽吹く頃にはうまみがギュッと凝縮された新茶ができあがるのです。

また、新茶は収穫する場所や時期によっても少しづつその味が変わってきます。
例えば私が住む奈良県の新茶は、五月中旬に収穫されるので全国の茶産地の中でも少し遅めです。芽が出るまで長い時間がかかる分、じっくり育つので、肉厚の新芽ができあがります。まろやかで香り高く、うまみの濃い新茶になるといわれています。

おいしく飲めるお茶の条件は、湯温70-75度、時間は50-60秒が最適といわれていますが、その通りにできない日があってもいいと思うのです。今日は濃かったな…とか、渋みが強かったな…とか、微調整しながら自分好みの味に整えていく。その過程もまた、おもしろいと思うのです。

以前、お茶屋の店主がこんなことを教えてくれました。

「このお茶はね、色がきれいに出るんだよ」

こう言われたとき、私はハッとしました。

今までお茶を選ぶとき、色がきれいに出るか?という観点で見たことがなかったからです。店主の話を聞いてわくわくしながら、そのお茶を手に取り、家で早速試しました。冷茶だったのですが、お茶はみるみる鮮やかなグリーンに。深みのあるその色があまりにもきれいで、冷蔵庫をあけるたびにうれしさが込み上げてきました。

自分なりに、自由に、お茶は五感を使って楽しめばいい。そんな大切なことを教えてもらったような気がします。

さて、今年はどんな新茶ができるのでしょうか。
例年よりあたたかい気候だったので、早めに育っているかな?味はどんな感じかな?そんなことを想像しながら今年も新茶を楽しみたいと思います。

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高根恭子

うつわ屋 店主・ライター
神奈川県出身、2019年に奈良市へ移住。
好きな季節は、春。梅や桜が咲いて外を散歩するのが楽しくなることと、誕生日が3月なので、毎年春を迎えることがうれしくて待ち遠しいです。奈良県生駒市高山町で「暮らしとうつわのお店 草々」をやっています。好きなものは、うつわ集め、あんこ(特に豆大福!)です。畑で野菜を育てています。

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