浅利あさり

旬のもの 2020.05.22

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こんにちは。漁師をしている三浦尚子です。今日はあさりについてのお話です。

初夏といえば、潮干狩りのシーズン。みなさんは潮干狩りをしたことがありますか?
私がまだ小さかった頃、テレビで見た「潮干狩り」が楽しそうで憧れを抱いていたのですが、私の実家は海から遠いので潮干狩りをしたことがありませんでした。
しゃがみこんで熊手でしゃりしゃりと砂をかいて、あさりを見つける潮干狩りはまるで宝探しのよう。テレビ越しにその様子を見て、子ども心をくすぐられていたのかもしれません。

潮干狩りでお馴染みのあさりは全国各地に生息していて、場所によって黒や白、褐色など、貝殻の模様に違いがあるものの基本的には同じ種類。
あさりの漁獲量日本一は愛知県の三河湾ですが、あさりの数が減ってきていることから、中国や韓国からの輸入量も多いです。

貝殻からにょきっと付きでた2本の触覚のようなものは、「入水管」と「出水管」という部位。
入水管からエサとなる植物性プランクトンを吸収してエラでこしとり、今度は出水管からろ過した海水を出します。ろ過をすることで海水を浄化する力を持っているので、海にいる他の生物の生息環境を良くしてくれるのです。
1時間で約1リットルの海水をろ過するので、単純に考えると24時間で24リットル。あんなに小さい体で、実はすごい貝なのです。

あさりを食べるとなると、1日がかりです。
おいしいあさりを食べるためには、時間と手間をかけたほうが絶対にいい。

最初に砂抜きからはじめます。砂抜きをやらず、食べたときに砂を噛んだら悲しいのでこれは忘れずに。潮干狩りで獲ってきた場合は砂が落ちるように、貝と貝をこすりましょう。

次に3パーセントの塩分濃度の塩水を作ってから、少し網目の大きなザルをしいたボウルに塩水を入れて、あさりもどぼん。20℃くらいの水温で活発になるので、室温で暗い場所に半日くらい置いて、水を捨てたら砂抜き完了。

あさりといったら、酒蒸しがおいしいですよね。シンプルだけどおいしい食べ方のひとつです。加熱することで旨みが凝縮された出汁がでるので、あさりの味を存分に楽しめます。
あさりと一緒に刻んだネギやクレソンを入れた酒蒸しが私は好きです。あさりのお出汁がするすると体に染み込んで、じんわりと満たされます。

大人になったいま、家からすぐ近くに海がある暮らしになりました。子どもの頃に抱いていた憧れは、思い返してみると実は叶っていたり、自分が思ったよりも身近になっているのかもしれません。
浜辺の波うちぎわを歩きながら、あさりや海の生き物たちを探しに行くこと。それはもしかしたら難しいことかもしれないけど、食卓から海や初夏の入りを感じていただけたらうれしいです。

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三浦尚子

漁師・ライター
神奈川県出身、岩手県在住。春が好き。ほっとする暖かさと、生き物が活発に芽吹いていく空気が心地よく感じます。趣味はカメラとおいしいごはんを食べること。夜明け頃の海が好きで、ときどき海の写真を撮っています。

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