さくらんぼ

旬のもの 2020.06.04

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漬物男子、田中友規です。
今日はさくらんぼを漬物にした人のお話です。

日本を代表するさくらんぼといえばやっぱり佐藤錦。
ハリツヤの良い赤い果皮は極々薄く、透明感を帯びたまさに初夏の宝石!
ぷつっと口中に弾ける果汁の優しい味わいは、この時期だけの贅沢です。

そんな佐藤錦の影に、もう一つ別のさくらんぼがいることをご存知でしょうか。
実はさくらんぼは同一の種類同士で受粉しても実がつきません。
別品種と混ざり合うことではじめて結実するのですが、その相性が悪ければ実の量が少なく味も落ちてしまいます。
研究者たちは、佐藤錦と相性のよい品種を探し続け、ついに「ナポレオン」という品種と「佐藤錦」を一緒の果樹園で育て、交配させれば抜群の収穫量を得ることを発見したのです。
ナポレオンのおかげで佐藤錦は豊作!万々歳!・・・と思いきやもうひとつ困ったことが起こります。

もともと実の着きが良いナポレオンも大豊作になってしまうのです!
ナポレオンは食感が固く、酸味も強いため生食用では買い手がつきません。
大量に余ったナポレオンの用途に頭を悩ませた末、誕生したのがナポレオンのシロップ漬缶詰でした。
そう、クリームソーダの上にちょこんと乗っかった、あのピンクのさくらんぼです。

明治28年、いまから125年も前、初めて缶詰にして長期保存を可能にした井上勘兵衛さんの功績です。
そうか、あんみつも、レモンスカッシュも、プリンアラモードも、どれも可愛く見えるのは、勘兵衛さん、あなたのおかげだったのですね。
可愛らしくて、ちょっと懐かしいあのシロップ漬けのさくらんぼを「さくらんぼの漬物」というとちょっと強引でしたが、どんなものにも物語があるものだなぁと、感心してしまいました。
 
 

6月に入り、もうすっかり初夏の気温。梅雨も目前、湿気も帯びています。
こんな日はバルコニーで手絞りレモンスカッシュを作るのも良さそう。
だが待てそういえば・・・と、京都の蒸し暑さでふと思い出したのは
さくらんぼが欠かせないシンガポール・スリングのこと。

シンガポール・スリングは、ラッフルズホテル「Long bar」のバーテンテンダーだった
ヤム・トン・ブンによって考案された、さくらんぼを使ったブランデー入りのカクテル。
イギリス植民地時代のシンガポールでは若い女性がお酒を飲むことは、あまり良いことではないとされていました。
そこでヤムは、若い女性がお酒を飲んでいない様に見える飲み物を作ろうと、透明のジンをベースにして、パイナップルやライムなどを加えてフルーツパンチに見えるよう工夫したのです。
もちろん仕上げにさくらんぼをピックに刺してトッピング。甘酸っぱくてトロピカルなピンクのカクテルです。

今年はどこにもいけないGWを過ごしたわけですから、
#STAYHOMEしながらシンガポール旅行するのも悪くありません。

  • ドライ・ジン 30ml
  • チェリー・ブランデー 15ml
  • ベネディクティン 7.5ml
  • ホワイトキュラソー 7.5ml
  • ライムジュース 15ml
  • パイナップルジュース 120ml
  • グレナデン・シロップ 10ml
  • アンゴスチュラ・ビターズ 1dash

ぼくはお酒が飲めないので、もっぱらモクテル。
アルコール類を、フレッシュなさくらんぼに変えてジューサーでシェーク。
タンブラーに注ぎ、ソーダで割って完成です。

さくらんぼ独特のほどよい酸味が、夏の湿気で霞みがかった頭をすっきりと目覚めさせてくれます。

シンガポール・スリング片手に、つまみはLong bar名物のピーナッツ。
サマセットモームの小説でも読み始めれば、そこはもうシンガポール。
最後はピックに刺したさくらんぼをイギリス淑女気分で味わうのもお忘れなく!

日本とシンガポール、2つのさくらんぼのお話でした。

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田中友規

料理家・漬物男子
東京都出身、京都府在住。真夏のシンガポールをこよなく愛する料理研究家でありデザイナー。保存食に魅了され、漬物専用ポットPIcklestoneを自ら開発してしまった「漬物男子」で世界中のお漬物を食べ歩きながら、日々料理とのペアリングを研究中。

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