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こんにちは。漁師をしている三浦尚子です。今日は、ホヤについてのお話です。

みなさんは「ホヤ」をご存知でしょうか?私の住んでいる地域では、毎年暑い時期になると、赤いパイナップルのような姿の旬のものがスーパーの鮮魚コーナーに並びはじめます。

関東育ちの私は、岩手に住むまでホヤというものを知らなかったし、食べたこともありませんでした。青い海から、真っ赤でゴツゴツとした凹凸のあるボールみたいなものたちが連なってあがってきたのをはじめて見たとき、「なんだ、この生き物は!?」と思って、真っ赤なホヤの衝撃は凄まじかったです。

ホヤは宮城県、岩手県、青森県、北海道と、東方より北の地域が主な産地。主に宮城県で多く養殖されていて、スーパーなどに並ぶ大きさになるまでに3〜4年かかります。
なんともふしぎなのですが、ホヤには「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」「旨味」の5味があり、食べると全部味わえるのです。口の中で味が変化していくので、もしかしたら好き嫌いがわかれるかもしれません。お酒好きにはたまらない食材でもあります。

見た目や味に特徴のあるホヤですが、平安時代の頃から食べられていたそうで、実は歴史のある食べ物。いまでは流通面の向上や、ホヤ漁師さんたちが出荷前に行う鮮度管理のおかげで遠くに住んでいてもおいしく食べることができますが、ホヤは鮮度が命な食材なので特に足が早く、昔は主に漁師さんたちや地元の中で食べられていたものでした。

ホヤは1年通して食べることができるのですが、旬にあたる初夏から夏にかけて気温が上がってくると、身が厚くなり味が増してきます。なので、いま食べるホヤが1番おいしいです。

いまはもう養殖していないのですが、私が海で働きはじめた頃は職場でも少しだけホヤを養殖していました。ときどき牡蠣やロープにくっついてきたホヤを見ると、そういえば道具づくりや地種の仕込みをしたなあと思い出します。

養殖をする前に、まずホヤの赤ちゃんを採苗するための道具づくりをするのですが、3メートルくらいの長さの麻のロープをぐるぐると回しながら、太い三つ編みロープをたくさん作りました。たくさんの三つ編みした麻ロープと牡蠣を入れるネット籠を組み合わせて、びよーんと長い、仙台の七夕かざりのような形にします。

そして、つくった採苗道具をホヤの産卵期にあたる11月下旬から12月あたりに海へ。ホヤは暗い場所を好むので、海底の光が当たりづらい場所などにくっつくそう。なので、海底めがけて麻ロープを沈めてしばらく置いておきます。

仕込みをするときに海からあげてみると、麻のロープに小さいホヤがくっついていて、「このままでいいのにな…」、なんて内心思いながら仕込み作業をしていました。1センチにも満たない小さいホヤの姿は、とにかくかわいいのです。

ホヤを食べるなら、好きな人はそのまま刺身で。加熱することで香りがほどよく飛んで食べやすくなるので、天ぷらや炊き込みごはんにして食べるのが初心者向け。私は料理したもので食べられるようになりました。(実は、生ではちょっと苦手です……)

東北ならではの食べ物だと思うので、ぜひいまの時期のホヤを食べていただけるとうれしいです。

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三浦尚子

漁師・ライター
神奈川県出身、岩手県在住。春が好き。ほっとする暖かさと、生き物が活発に芽吹いていく空気が心地よく感じます。趣味はカメラとおいしいごはんを食べること。夜明け頃の海が好きで、ときどき海の写真を撮っています。

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