ドクダミ

旬のもの 2020.06.18

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こんにちは、俳人の森乃おとです。

雨多く降る6月、庭を埋めつくすようにしてドクダミが生い茂り、花を咲かせています。

北半球では太陽がもっとも高くなり、一年で一番昼が長く、夜が短くなる時期。世界各地、特にヨーロッパでは盛大に夏至祭が開かれますが、あいにく日本では梅雨期であり、日の長さを実感することが難しいかもしれません。

湿度が高く気圧の変化が激しいこの時期は、なんだか体調もよろしくなくなってきます。そんな日々、ふとドクダミの花に目をやれば、その白さに心洗われるような思いがするのです。

ドクダミは3大民間薬草のひとつ

毎年6月下旬、雨疲れのころの夏至の日には、庭のドクダミを摘み取って乾燥させ、ドクダミ茶をつくることにしています。焙じると香ばしくなり、ミントを混ぜると、より美味しくなります。

ちょうど同時期、旧暦5月5日は「端午の節句」。この日は「薬日(くすりび)」とも呼ばれ、古来より薬草を摘むならわしがありました。

ドクダミは、ゲンノショウコ、センブリと並んで日本の3大民間薬草のひとつとされています。別名は「十薬(じゅうやく)」。健胃、利尿、毒消しなど、その薬効は十を下らないとか。和名の由来も、毒を矯(た)める=抑えることから、「毒矯め(どくだめ)」。「毒溜め」と表記されることもあります。

何と言ってもドクダミの特徴は、その独特の臭気でしょう。「魚のような生臭い匂いがする」ということで、魚腥草(ぎょせいそう)とも呼ばれ、英語名もフィッシュミントfish mintあるいはフィッシュハーブfish herbなど。やはり「魚の匂い」にまつわります。

その匂いのもとは「デカノイルアセトアルデヒド」という物質にあり、強力な殺菌作用をもつことが知られています。

幼少のみぎり、転んで膝をすりむいたときなど、母はドクダミの葉を千切り、傷口に貼ってくれたものです。今となっては遠い昔のこととなりました。

十薬の白き十字を以て誓ふ――じゅうやくのしろきじゅうじをもってちかふ

俳人の福田蓼汀(ふくだ・りょうてい)の一句です。季語は「十薬」で、季節は夏。

子どものころの私にとって、ドクダミは「じめじめした所に生えている嫌な匂いの草花」でしかありませんでした。大人になった今では、とても好きな草花のひとつです。ヨーロッパでは教会の庭などに植え、花の姿を白い十字架に見たてて鑑賞されるとか。

さて、ドクダミはドクダミ科ドクダミ属の多年草。やや日陰の湿った場所を好み、民家の庭や空き地、道ばたなどによく群生しています。

4枚の白い花びらのように見えるものは、実は花びらではありません。総苞(そうほう)といって葉が変形したものです。中央にある高さ1~3㎝の淡黄色の柱状の部分が、小さな花の集まり。この本当の花には雄しべと雌しべしかなく、花びらも蕚(がく)もありません。

茎ごとに数枚つくハート形の厚い葉も、よく見ると、とても優美だと思いませんか? 表側は鮮やかなグリーンで、裏面は紫色を帯びています。そのため、表側の縁取りや葉脈に、紫や朱色が現れます。

ドクダミは地面の下深く、白い地下茎を張りめぐらせて増えます。いったん庭を覆い尽してしまうと、駆除は大仕事。茎は柔らかいので引っ張ると折れてしまい、残った地下茎からすぐに再生します。

花言葉は「野生」「白い追憶」「自己犠牲」

ドクダミの花言葉は「野生」「自己犠牲」「白い追憶」。「野生」は旺盛な繁殖力から。「自己犠牲」は毒を消す作用からでしょう。「白い追憶」は、ドクダミの葉を揉んで傷を治してくれた、母親の懐かしい面影からかもしれません。

ドクダミ 蕺、蕺草
学名Houttynia cordata
英語名 fish mint, fish herb, bishop's weed(司教の雑草)など
ドクダミ科の多年草。別名は十薬(じゅうやく)。白い花びらに見える4枚の総苞(そうほう)の中心から黄色い花穂が立つ。草丈は40㎝ほど。花期は5~8月。

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森乃おと

俳人
広島県福山市出身。野にある草花や歳時記をこよなく愛好する。好きな季節は、緑が育まれる青い梅雨。そして豊かに結実する秋。著書に「草の辞典」「七十二候のゆうるり歳時記手帖」。「絶滅生物図誌」では文章を担当。2020年3月に「たんぽぽの秘密」を刊行予定。(すべて雷鳥社刊)

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