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こんにちは。漁師をしている三浦尚子です。
夏といえばウニ。ウニを愛している人たちにとって、待ちわびていた季節です。今日はそんなウニのお話です。

ウニは北海道や岩手県、青森県、南は長崎県や鹿児島県など、広く生息しているのですが、北海道がいちばんの生産量です。北海道では日本海、オホーツク海、太平洋と3種類の海に面していることや、種類の違うウニが生息していることで、地域によってそれぞれウニ漁をする時期が異なっていて、長い期間食べることができます。

ウニは「棘皮(きょくひ)動物門」という属性で、トゲトゲの体の中に心臓や神経を持たない原始的な体をしています。パッと見た感じはだいぶ違いますが、なまこやヒトデもウニの仲間とされていて、特徴として同じ形が5つ放射状に並んだ“五放射相称(ごほうしゃそうしょう)”という形状を持っています。

私の住んでいる町では、5月頃から8月頃にかけて「ウニの開口日」が設けられて、期間限定でウニ漁がはじまります。「開口日」とは、決められた日程だけウニやアワビ、海藻類などを獲ってもいい日ということ。

実はいつでも誰でもウニ漁をしていいという訳ではなく、資源保護のための禁漁期間があります。漁協の組合員になっている人を対象にウニ漁をしても良い日や時間帯、1日に獲ってもいい漁獲量などが決められていて、その決まりの中で漁をするというものです。(対象者以外がウニを獲ると、密漁になってしまいます)
なので、このウニの開口日がやってくると、漁師さんたちはウニを獲るために使う鉤爪がついた長いながい竿と、海中にいるウニを見るための箱メガネ、ウニを入れる籠を船に積んで出船していきます。

水が綺麗で波もおだやかであれば見えるけど、波があったり水が濁っていたりすると、海底にいるウニを見つけたり鉤で獲るのはなかなか難しく、その日の海の状態によって獲れ高は変わります。天候にも左右されるものなので、必ずしもたくさん水揚げできるものではないのです。

獲ってきたウニを陸にあげたら、今度はひとつひとつ手作業で身を剥いていきます。ウニの身を剥きながら、海水でふやけた指でつまんで、ときどきつまみ食いができるのは海仕事の特権かもしれません。

ところで、ウニは非常に食いしんぼうで、昆布やホンダワラなどの海藻が大好き。ウニ漁をしないことでウニが増えすぎると、今度はウニに天然の海藻類が食べつくされて、アワビや他の魚介類にとっても影響のある「磯焼け」の原因になることもあります。自然の生態系も漁をする人間も、どちらもバランスが大切なのかもしれません。

私が小さい頃、東北出身の母が「関東のウニはおいしくない」と言っていたことをずっと覚えていて、「ウニはおいしくないものなのだ」と思っていたのです。なので、実は岩手県に住むまで一度も食べたことがありませんでした。
岩手に住んではじめて食べたウニは甘さがあっておいしくて、いままで食わず嫌いをしていたのが本当にもったいなかったなあと思いました。

私のおすすめは、ウニ本来の甘みを味わえる「塩水ウニ」。ウニが入った瓶から出したウニを、そのままごはんの上にドンと乗せて食べるウニ丼は幸せの塊です。
いまが旬のおいしいウニをぜひお試しあれ!

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三浦尚子

漁師・ライター
神奈川県出身、岩手県在住。春が好き。ほっとする暖かさと、生き物が活発に芽吹いていく空気が心地よく感じます。趣味はカメラとおいしいごはんを食べること。夜明け頃の海が好きで、ときどき海の写真を撮っています。

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