かさご

旬のもの 2020.08.20

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こんにちは。漁師をしている三浦尚子です。岩手ではお盆を過ぎると段々と暑さが落ち着いてくるのですが、今年はまだまだ暑い日が続いています。でも、朝晩に吹く風は涼しくて、夏と秋の入れ替わりを感じるようにもなってきました。
今日はかさごについてお話します。

みなさんは、「かさご」という魚を見たことがあるでしょうか?
かさごには「かさごの面洗わず」という言葉があるのですが、それは見た目がトゲトゲしていて目がギョロっとしているから。また、かさごの漢字には「笠子」と「瘡魚」があり、皮膚がただれているように見えることから「瘡」という文字が当てられたとのこと。これだけを聞くとなんだかちょっとかわいそうな感じがするのですが、食べると絶品。漁獲量が少ないことから、高級魚として扱われている魚です。
無骨な武士を思わせる外見から、端午の節句の祝いの膳に乗せられることもあります。

かさごは昼間は隠れていて、夜にエサを探しに出かける夜行性の魚です。海岸近くから、水深200メートルくらいまでの岩礁域に生息しています。
浅いところに住むかさごは、岩などの色に合わせた褐色をしていて、深いところに住むかさごは鮮やかな赤い色。なんで色に違いがあるのかというと、青い海の中では赤色の体は相殺されて地味な色味に見えるため、保護色になっているそうです。これは深海における適応のひとつで、深海生物は赤い体色が多く見られるそう。

かさごは地域によって呼び方が違います。調べてみると、東京では主に「かさご」と呼ばれているのですが、関西より西側の地域では「がしら」や「がし」、「ががね」「あらかぶ」などなど、たくさんの呼び方がありました。なんとなく濁点が多い気がするのは気のせいでしょうか…?

ユニークな呼び方の話でいうと、「うっかりかさご」という名前がついた種類もいます。本当にその名前なの??と思うような感じがしますが、実際にそう呼ばれている魚。名前の由来は、昔「かさご」と「うっかりかさご」が似ていることで区別しておらず、魚類学者さんが「気づかずうっかりしていた」ことから命名されたとのことでした。

新鮮なかさごが食べられるのは釣り人の特権。ですが、移動が活発な魚ではないので、あまりたくさん釣られてしまうとその地域の個体数が戻りにくく、段々とかさごが少なくなっていきます。何事にも適量があると思うので、自然とのバランスを考える必要があります。

かさごからでてくる出汁やほろりとした身を堪能するために、おみそ汁にしたい魚だなあと思います。ちょっと贅沢かもしれませんが、かさごを味わう朝ごはんを食べたいものです。

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三浦尚子

漁師・ライター
神奈川県出身、岩手県在住。春が好き。ほっとする暖かさと、生き物が活発に芽吹いていく空気が心地よく感じます。趣味はカメラとおいしいごはんを食べること。夜明け頃の海が好きで、ときどき海の写真を撮っています。

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