秋も深まり、木々がだんだんと色づき始めるこの季節。歩いているとどこからともなく風に乗ってふわりと甘い香りが漂ってくる。「あ、金木犀だ」と、上を見上げると枝にオレンジ色の小さな花がところせましと咲いている。

金木犀は、中国原産で10mほどまで育つ常緑性の小高木樹。9月下旬から10月上旬まで花をたくさん咲かせます。名前の由来は、樹皮が動物のサイ(犀)の皮膚に似ていることと、金色の花を咲かせることからつけられました。

一番の特徴はやはりその香り。
金木犀は、春のジンチョウゲ、初夏のクチナシとともに、香りの強い花をつけることから、三大香木(さんだいこうぼく)と呼ばれるほど。原産地の中国では遠くまで香りが届くことから、「千里香(せんりこう)」とも呼ばれていました。
中国では木犀のことを「桂」と書くことから、金木犀を丹桂(たんけい)や桂花(けいか)と呼び、香りを楽しむ「桂花茶」や「桂花陳酒」はここから生まれました。

金木犀の花ことばは、「謙虚」「陶酔」「真実の愛」「初恋」。
その香りの強さに反して、花が控えめなところから「謙虚」。また、甘く官能的な香りがするところから「陶酔」や、どこまでも追いかけてくるような濃厚な香りが「真実の愛」「初恋」にも通ずると言われています。

さて、「香りは記憶と結びつく」と言いますが、私は金木犀の香りを感じると毎年「切なさ」を覚えます。
だんだんと日が短くなり、本格的に寒さが厳しくなる頃。木枯らしが吹き始め、人々の服装も、マフラーやストールなど肌を覆うものが増えてきます。
毎年この季節は、私にとって「転機」になったことが多い時期だったので、秋の澄んだ空気のにおいが金木犀と混じり合って、忘れていた奥深い記憶をくすぐります。過去に決断してきたこと、そこから出会った人々や経験してきたことを思い出しながら、今年ももうすぐ終わる感慨深さが複雑に入り混じって「切なさ」になっているのかもしれません。
ですが、ただ切ない気持ちで終わるのではなく、これをきっかけに改めて自分の立ち位置を確認して、未来を考える。そんな大切な機会になっているなぁと今回、金木犀の記事を書いていて改めて思いました。
金木犀、皆さんにはどんな思い出がありますか?
秋の訪れを感じながら思い出に浸ったりと自分を見つめなおしてみるのもまた、いいかもしれませんね。

松下恭子
うつわ屋 店主・ライター
神奈川県出身、2019年に奈良市へ移住。
好きな季節は、春。梅や桜が咲いて外を散歩するのが楽しくなることと、誕生日が3月なので、毎年春を迎えることがうれしくて待ち遠しいです。奈良県生駒市高山町で「暮らしとうつわのお店 草々」をやっています。好きなものは、うつわ集め、あんこ(特に豆大福!)です。畑で野菜を育てています。
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