月見酒つきみざけ

旬のもの 2020.10.26

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こんにちは。日本酒ガールの松浦すみれです。

月の美しさが、いっそう冴えわたる季節。
古くから人々は、静かな秋の訪れと共に、月の満ち欠けを愛でてきました。名月の宴が催された平安時代には、月はどんなに明るく輝いていたことか。水面に映る月や、盃に映る月を楽しみながら、現代よりも豊かな感性で、秋の夜長を遊んでいたのかもしれません。

私が生まれ育った近くには、観光名所の嵐山があり、月にちなんだ渡月橋がありました。

由縁は鎌倉時代に遡ります。
亀山上皇が嵐山で月見をした折、曇りなき夜空に、橋の上をあたかも月が渡っていく様を、「くまなき月の渡るに似たり」とおっしゃったことに因みます。

古の人々へ想いを馳せて、これまで私も、渡月橋へお月見に行った事があります。橋の真上を真っすぐと昇っていく、まんまるのお月さま。あたりは、迫る闇と静寂に包まれ、川面に月が映り揺らいで、この上ない美しい情景でした。

さて今宵はどこで月を眺めましょうか。

例年、十五夜や十三夜には、京都各所の神社やお寺では、月を愛でる宴が開催されます。雅楽や舞踊など、優雅さを競うように風流な催しが行われていて、私にとっては身一つでは足りないくらい、誘惑が多い一夜です。振る舞われる月見団子に月見酒、美味しい誘惑も見逃せません。月見ていっそう、我肥ゆる秋です。

数年前の十五夜には、縁あって、貴船神社のお月見の会へと出かけました。 街の喧騒から離れ、山林を気持ちよく走り抜けていく叡山電車に乗って、一路、鞍馬山へ。 貴船口駅を降りると、凛とした清々しい空気が漂っていました。清流沿いの道をバスに揺られて、間もなくお宮に着くと、 境内では、早くも月見酒が配られ、多くの人で賑わっていました。深い緑に囲まれた境内でいただくお酒はまた格別なもの。本殿に参拝した後、さっそく盃を手に、月が姿を見せるのを待つことに。

夜の帳が下りはじめた山々を背景に、秋の草花が飾り付けられた舞台では、舞妓さんの唄と踊りがはじまりました。うっとりと眺める人たちに芽生える、不思議な一体感。

そのとき、雲に隠れていた月が、そっと顔を出しました。
秋の実りに感謝して、多くの人と喜びを共にした月の宴。
お月様もにっこりと、微笑んでくれたようでした。

今月のお酒「ほっこり、お燗酒の楽しみ」

いよいよ燗酒が身に染みる季節が到来しました。季節やお酒の種類によって、色んな温度帯を楽しめることも、日本酒の大きな魅力のひとつ。また、ひとくちに燗酒と言っても、温める温度帯によって「日向燗」「人肌燗」「ぬる燗」「飛び切り燗」など、風情ある名前が付けられています。温めることで、大きく花開いたように味わいが変わって、思わずうっとり…なんてことも。体が冷えやすいことも多い女性には、特におススメしたい飲み方です。

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松浦すみれ

ルポ&イラストレーター
京都生まれ。京都の神社で本職の巫女を経て現職。現在、滋賀と京都の二拠点生活。四季折々に酔いしれて、絵と文を綴る日々。著書『日本酒ガールの関西ほろ酔い蔵さんぽ』(コトコト)。
photo:©️NAOKI MATSUDA

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