さつまいも

旬のもの 2020.11.11

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漬物男子、田中友規です。

週末ちょっとだけ遠出をしよう、と家族で京丹後へいってきました。
いつもは十勝に旅している時期なのですが、今年は中止。
在宅ワークもいよいよ煮詰まって、人のいない広々とした海を見たくなったのです。

久美浜といえば、夏は果物、冬は蟹。

秋はちょうどその狭間で、特にいまの時期は人が少なく、深呼吸しにいく場所としてはぴったりです。

国道178号線沿に、果樹園直営の販売所が軒を連ねる道があります。
このあたりは久美浜湾に面した砂地エリア。
その水捌けの良さを利用し、桃、葡萄、スイカ、メロン、梨などたくさんの種類が育てられていて、季節ごとに並べられられた果物は、見ているだけでも楽しいものです。

その中で、オレンジ色のドットで彩られた販売所を遠くに見つけ、気になって立ち寄ってみることにしました。

その正体は、竹の竿に紐で結えた百を超える干し柿。
潮風と秋の日差しで、干し柿はタンニンが不溶性へと変化し、苦味を感じなくなります。糖度を40〜50%まで増やし、冬の保存食になっていくのです。
昔から繰り返されてきた生活の営みが、コロナ禍でもいまだ変わらずここにありました。

販売所の奥では、年配の女性が一人でするすると熟練の手つきで柿の皮を剥いています。
その見事な手捌きに引き寄せられてお店に入ると、この時期のおすすめは梨とさつまいもだと。

以前、金沢の伝統野菜「五郎島金時」について取材した時も、同じく海に近い畑で栽培されていたことをふと思い出しました。

「海沿いのさつまいもは、焼き芋にすると磯の味がする」

確かそんな話を聞いたような気がして、焼き芋用に小さめのさつまいもを一袋買って帰ることに。

普通はアルミホイルで包んで200度程度のオーブンで30〜40分というところでしょうが、今回は本格的に石焼き芋を作ってみることにしました。

久美浜のさつまいもで作る石焼き芋ですから、久美浜の海岸で石拾い。
小学生の息子とふたり、大きすぎず小さすぎず、ちょうどいいサイズの焼き芋用の石をいくつかみつくろい、あとはどっちがいい石を見つけられるか競争したり、茂みから顔を出したカエルを捕まえてみたり、ぬかるんだ砂でよろけて両手にいっぱい集めた石を放り投げてしまったり。

食育だとかいうつもりはありませんが、我が家の食への携わり方はいつもこんな感じ。

石焼き芋が作りたくて石拾いをする父を、息子はどんなふうに見ているのでしょう。

息子がこれぞと選んだゴツゴツした石3つと、あとは、我が家の裏庭の石を足し、しっかりと汚れを落とすため煮沸消毒。じりじりと鉄鍋で熱します。

石や鉄鍋は保温力に優れているため、長時間じっくりとさつまいもに熱を加えることができるのです。

まだ濡れていた石が鍋にあたり、じゅうっと湯気があがると石に包まれるように配されたさつまいもから仄かに磯の香りが立つ。

焼き芋は中心部が60度〜70度あたりで長時間加熱されることで、アミラーゼという酵素がデンプンを糖質化し、蜜のように甘く仕上がります。
少し皮目が焦げる程度で弱火に落とし、あとは時間の許すかぎり低温加熱です。たまに上下をひっくり返して熱の入れ替えをしたり、3時間弱でようやく焼き芋らしい姿になりました。

こっちは美味しい、ここはまだ固い、ほんのり塩味が効いているように感じるのは気のせいか、潮のせいか、などと面白がって初めての石焼き芋を家族で食べる。

「石を拾う体験」という調味料は、何にも変えがたい美味しい時間を生み出してくれました。

たった数百円で、心もおなかもあたたかく満たされた週末は、さつまいもと石のおかげなのでした。

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田中友規

料理家・漬物男子
東京都出身、京都府在住。真夏のシンガポールをこよなく愛する料理研究家でありデザイナー。保存食に魅了され、漬物専用ポットPIcklestoneを自ら開発してしまった「漬物男子」で世界中のお漬物を食べ歩きながら、日々料理とのペアリングを研究中。

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