春先の雪

旬のもの 2021.01.18

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こんにちは。気象予報士の今井明子です。

1年でもっとも寒い季節になりました。
毎年成人の日や大学入試の試験日に、雪のために交通機関が麻痺して大混乱という報道を目にすることも多いものです。

日本の冬は、日本海側と太平洋側とでまったく気候が違うことで知られています。
日本海側はご存じのとおり豪雪地帯です。しかし、太平洋側は基本的には乾燥した風が吹き、晴れることが多いですよね。

日本海側に雪が多いのは、冬の季節風が原因です。大陸のシベリア高気圧から吹き出す冷たく乾燥した風が日本海を通る際に、水蒸気を含んで湿った風になります。それが日本列島の真ん中を通る山脈にぶつかると、雲ができて雪が降ります。そして、雪を降らせたあとは、季節風は再び乾燥し、山を越えて太平洋側へと吹き降りるのです。

このようなしくみで日本海側が豪雪地帯になり、太平洋側では雪はあまり降らないのです。

しかし、太平洋側にもまれに雪が降ることがあります。これは、日本海側の雪とはまったく違うしくみで起こります。

日本海側に雪をもたらすのは、シベリアにある高気圧が原因ですが、太平洋側の雪は、日本の太平洋側の海岸をかするように通過する「南岸低気圧」が原因です。

さて、この太平洋側の雪なのですが、予報が難しいことで知られています。確かに、前日まで雨と予報されていたのに当日はぐんぐん気温が下がって雪が降ることもありますし、さんざん「雪が降るぞ」と予報されていたのに結局雨だったということもあります。なぜ、こんなに当たりにくいのでしょうか。

まずは、南岸低気圧の進路によって予報が変わってきます。たとえば、伊豆諸島の八丈島の少し北を低気圧が通ると雪が降りやすく、それよりも北を通ると雨になりやすいといわれています。その一方で、八丈島よりも南の、日本列島から離れた場所を通過すると、日本列島の太平洋側には雨も雪も降りにくくなります。

しかし、雨か雪かはコースだけで決まるのではなく、低気圧の発達度合いや上空の寒気の強さ、雲の広がりなど、さまざまな条件が複雑に関係しています。だから、なかなか予報が当たりにくいのです。

そんなわけで、いまだに当たりにくい太平洋側の雪の予報。大事な予定がある人にとっては、やきもきする時期ではあるのですが、太平洋側の雪は珍しいとあって、わくわくすることも確かです。

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今井明子

サイエンスライター・気象予報士
兵庫県出身、神奈川県在住。好きな季節はアウトドア・行楽シーズンまっさかりの初夏。大学時代はフィギュアスケート部に所属。鯉のいる池やレトロ建築をめぐって旅行・散歩するのが好き。

今井明子公式ホームページ

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