こんにちは。科学ジャーナリストの柴田佳秀です。
私は関東地方に住んでいるのですが、立春が過ぎてもまだまだ寒さが厳しく、いくら鳥好きでも観察に出かけるのは「どうしようかな~」とためらいたくなります。ところが、こんな寒さでも鳥たちはとても元気。そればかりか、もう子育てを始めるものまでいるので驚いてしまいます。

エナガは、そんな寒い時期から子育てを始める鳥のひとつ。日本では北海道から九州の森にすむ全長14cmほどの小鳥です。一番の特徴はなんといっても長い尾羽です。その長い尾羽を柄と見立てて、柄長(エナガ)という和名がつけられました。
長い尾羽は全長の半分にもなり、尾羽の長さを除くボディサイズはわずか7cmしかありません。これは日本の鳥では最小クラスです。また、体重もひじょうに軽く、わずか7g。1円玉7枚ほどしかありません。その軽い体と長い尾羽でバランスをとりながら、細い枝先を軽業師のごとく動きまわり、アブラムシなどの昆虫を食べて暮らしています。

2月末、エナガの中にはもう巣作りを始めるものがでてきます。なぜ、こんな寒い時期から繁殖をするのか理由はよくわかっていません。おそらく食べものをめぐって他の鳥と競争にならないとか、天敵のヘビが活動していないなど、都合の良いことがあるのでしょう。
また、エナガの巣はとても変わっていて、寒い時期でも子育てができる独特な構造をしています。ふつう鳥の巣といえば、小枝を編んだ篭みたいな物を想像すると思うのですが、エナガは、ガの繭をほどいて作った糸やクモの糸をコケに絡めて直径20cm ほどの丸い袋状の巣を作ります。そして、中には大量の鳥の羽毛が入っています。ある調査ではなんと2900枚も羽毛が入っていたといいますから驚きです。

ふわふわの羽毛で満たされた巣の中はとても暖かく、寒さが厳しい早春に子育てをはじめても、卵や雛が冷える心配がないのでしょう。羽の枚数は、寒い時期に作られた巣ほど多い傾向があるので、やはり寒さ対策であることがうかがえます。

ところでエナガたちは、この大量の羽毛をどこから調達してくるのでしょう。森にはそんなに羽毛が落ちているのでしょうか。じつは、あるところにはあるんです。
森を歩いていると、地面に沢山の羽毛が散らばっている場面に出会うことがあります。これはタカが獲物を食べるために羽毛を抜いたあとです。この羽毛をエナガが見つけて、巣に運び込んでいるんです。ということは、タカがいないとエナガは巣が作れずに困ってしまいます。鳥を食べるタカはエナガにとって怖い存在ですが、意外なところで利用しているんです。自然界のつながりは本当に不思議なことばかりです。


柴田佳秀
科学ジャーナリスト・サイエンスライター
東京都出身、千葉県在住。元テレビ自然番組ディレクター。
野鳥観察は小学生からで大学では昆虫学を専攻。鳥類が得意だが生きものならばジャンルは問わない。
冬鳥が続々とやってくる秋が好き。日本鳥学会会員。
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