家で過ごす時間が増えてから、大事にしていることのひとつに「香り」があります。
仕事で疲れて帰ってきて、ホッとひと息つきたいとき。
お香を炊いて読書をしたり、入浴剤をいれてゆっくりお風呂に浸かったり…。
最近は、近所を散歩していると「春の香り」をふわりと感じることがあります。
あたたかな空気にのせられて、どこからともなくやってくる花や草木の柔らかな香り。
大変な状況が続く日々の中でも、時間は流れ、季節はめぐっていることを感じさせてくれます。

そんな春の香りの中でも、ひときわかぐわしい香りで楽しませてくれる花が、「沈丁花(じんちょうげ)」です。
沈丁花は2月から3月にかけて咲き出す花で、夏の梔子(くちなし)、秋の金木犀(きんもくせい)と並んで三大香木といわれます。
枝の先にはいくつもの小さな花が手まりのようにかわいらしく集まってつきます。
花の色は白や黄色、ピンクなどがありますが、特によく見かけるのがつぼみは濃い紅色で、花びらは淡いピンク色が混ざり合った色です。

沈丁花という名前は、花の香りが「沈香」に似ていることと、十字型の花の形が香辛料の丁子(クローブ)に似ていることからつけられました。
さて、「沈丁花」と聞いて松任谷由美さんの名曲「春よ、来い」を思い出す人も多いのではないでしょうか。
淡き光立つ 俄雨
いとし面影の沈丁花
溢るる涙の蕾から
ひとつ ひとつ香り始める
耳に残るメロディときれいな言葉並びに、この季節になると思わず口ずさみたくなります。
この曲では、「香り」を「涙」にたとえているかのようで、さらに「蕾から溢れる」という比喩表現には胸の奥がちくりとするような切なさを感じます。
春は出会いの季節であり、また、別れの季節でもあります。この歌詞にはきっと、春が来た喜びと悲しさが入り混じったような複雑な気持ちが込められているのかもしれません。
私もこの季節になり、沈丁花など春の香りを感じると思い出すことがあります。
卒業、入学、転職、引っ越し..。振り返ると3月は「人生の転機」になることが多かった月で、高揚感と少しの不安を抱えながら毎年この季節を迎えてきました。その都度色々あったけれど、それでも元気にやっているし、少しずつだけど前に進んでいる。確かな足跡を再確認して、また今日からがんばろうという気持ちにさせてくれます。

俳句の季語としても使われてきた、沈丁花。
春の訪れと一緒に、眠っていた感情を呼び起こしてくれる花として愛でられてきたのかもしれません。
誰かを思ったり、感情をめぐらせたり。
今年も沈丁花があなたのもとへ豊かな香りを運んでくれますように。

松下恭子
うつわ屋 店主・ライター
神奈川県出身、2019年に奈良市へ移住。
好きな季節は、春。梅や桜が咲いて外を散歩するのが楽しくなることと、誕生日が3月なので、毎年春を迎えることがうれしくて待ち遠しいです。奈良県生駒市高山町で「暮らしとうつわのお店 草々」をやっています。好きなものは、うつわ集め、あんこ(特に豆大福!)です。畑で野菜を育てています。
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