不眠ふみん

旬のもの 2021.03.23

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こんにちは、国際中医専門員の櫻井です。

「不眠」を中医学では不寐(ふび)といいます。
これは日常的に寝付けない、眠りが浅い、目が覚めやすいなどの状態のことです。中医学的な不眠の解釈は、動的で発散性をもつ『陽』が強くなりすぎたか、もしくは、静的で収斂性(しゅうれんせい)をもつ『陰』が弱くなってしまったかという状態です。
陽が強くなりすぎると、覚醒して、寝付けません。陰が弱くなってしまうと鎮静できず、やはり眠れません。

では、それらに至るにはどんな要因があるのでしょう。
中医学では4つあると考えます。

1. 不適切な飲食
2. 喜怒哀楽など情志の失調
3. 労逸による失調
4. 病後や身体の虚弱

【 不適切な飲食 】

暴飲暴食と、濃茶・コーヒー・飲酒などが挙げられています。暴飲暴食では、体内に消化しきれない食事、『宿食(しゅくしょく)』がたまって、『痰(たん)』というドロドロの病理産物になります。溜まったものは基本、熱を発生するという原理が中医学にはあります。熱は動的で発散性をもつ陽なので、陽が強まり、眠れなくなってしまいます。お茶やコーヒー、酒なども、精神を撹乱させるので眠れなくなります。

【 情志の失調 】

これは、度を越した感情が睡眠に影響するケースです。怒りや鬱々とした感情が火となって燃え上がり、陽が強くなり(同時に陰も消耗します)、眠れなくなります。
喜びや笑いが過度になると、これもまた興奮である陽を強め、眠れなくなります。突然の驚きや恐怖では、精神が動揺し眠れなくなります。考えすぎは、陰を消耗します。そうすると鎮静できず、眠れなくなります。

【 労逸(ろういつ)】

労逸とは、過労と過逸のことで、過労は働きすぎや動きすぎを指し、過逸(かいつ)は、休みすぎや運動不足を指します。
過労では、胃腸が弱り、精神を安定させるための陰が十分に作られず、眠れなくなります。運動不足や休み過ぎでも、同じく胃腸機能が低下してしまうため、陰が必要量作られず、眠たくならなくなります。

【 病後や身体の虚弱 】

慢性病による陰の不足、加齢による血(陰に属します)の不足、腎陰(体内の体液の総称)の不足などがあります。

 

上記4つの要因は、それら症状と原因から『実証(じっしょう)』と『虚証(きょしょう)』に別れます。実証では、不眠に加えて、胸がソワソワする、怒りっぽい、口が苦い、喉の渇き、便秘、おしっこが少なくて黄色いなどの症状が見られます。虚証では、不眠に加えて、体質的に痩せて弱く、顔色に艶がなく、動悸、忘れっぽいなどが見られます

実証の場合は、熱を冷ます対策を優先し、虚証の場合は、足りないものを補う対策をします。

実証の場合は、脂っこいものや味の濃いものをさけ、陽である熱を鎮める働きを持った、ハトムギ、こんにゃく、アスパラ、きゅうり、ごぼう、ズッキーニ、セロリ、たけのこ、冬瓜、ナス、白菜もやし、レタス、キウイ、パイナップル、バナナ、レモン、海苔、昆布、アサリ、もずく、カモミールなどを積極的に日々の食事に取り入れてください。

虚証の場合は、安神(あんじん)といって、精神を安定させ、陰を補う働きをもつ、春菊、青梗菜、百合根、なつめ、アサリ、鰯、牡蠣、ホタテ、ラベンダーなどをとりましょう。

また、どちらも場合も辛いものや香辛料の多いものは避けるようにしましょう。

不眠はなかなかにつらい症状です。早めの対策が肝心なので、日頃からさっぱり味の温かい食事を心がけ、胃腸の負担となるような油っこくて味の濃いもの、甘いお菓子、生モノ、冷たい飲み物などは控えめにしてください。

また夜しっかり眠るためには、朝しっかり覚醒させることが大切です。できるだけ早起きを心がけ、朝はカーテンをあけて、窓を開けてしっかり深呼吸しましょう。できるなら、少し散歩するのもよいでしょう。

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櫻井大典

国際中医専門員・漢方専門家
北海道出身。好きな季節は、雪がふる冬。真っ白な世界、匂いも音も感じない世界が好きです。冬は雪があったほうが好きです。SNSにて日々発信される優しくわかりやすい養生情報は、これまでの漢方のイメージを払拭し、老若男女を問わず人気に。著書『まいにち漢方 体と心をいたわる365のコツ』 (ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)など。

櫻井大典|ゆるかんぽう

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