キジ

旬のもの 2021.04.11

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こんちには。科学ジャーナリストの柴田佳秀です。

今から20年くらい前、誰もいない早朝の銀座でカラスの調査をしていた時のことです。

「あれ? キジの絵が描いてある紙が飛んできたぞ...」

そう思いながら足下の紙をとっさに掴んだら、1万円札だったことがあります。
「風で飛んでくる紙切れが1万円札だなんて! やっぱり銀座は違うなあ」とひどく感心したことを覚えています。もちろんお金は交番に届けました。

現在、流通している1万円札の一世代前は、雌雄のキジが描かれていたのを覚えていらっしゃいますか? キジは日本の国鳥ですから、最高額紙幣のデザインにはふさわしいモチーフですね。それなのに今の1万円札は架空の鳥の鳳凰なのですから、私的にはちょっぴり不満。やっぱりキジの方がいいです。

さて、そのキジですが、オスは長い尾羽が自慢の全長81cmもある大きな鳥。メスはオスよりも小さくて58cmほどの大きさです。北海道と沖縄を除く日本全国に分布し、農耕地や河川敷などの草がはえる環境に生息しています。草の葉や種、昆虫が主な食べもので、渡りをする習性はなく、一年中同じ場所で暮らしています。

オスは4月になると、「ケンケーン」と大きな声で鳴き、翼を強く羽ばたいてドドドドという音を出す「母衣打ち(ほろうち)」と呼ばれる動作を頻繁に始めます。これがオスの縄張り宣言。鳴き声と羽音のセットで「ここは俺の縄張りだぞ」とライバルのオスにアピールし、同時にメスへの求愛メッセージを送るのです。

一方、メスには縄張りがなく、どこのオスの縄張り内でも自由に歩き回ることができます。そして、気に入った相手がいれば交尾をします。オスはそんなメスを獲得しようと、雄叫びと母衣打ちを繰り返して血眼に。意中のメスが接近すると、自慢の長い尾羽を広げダンスで求愛します。

それにしても、キジのオスはド派手です。真っ赤な顔にメタリックグリーンのボディは、日本の鳥の中でも派手さではピカイチです。ところがメスは褐色のまだら模様で地味系の姿。同じ種類なのにどうしてこうも違うのでしょうか?

それは雌雄で役割が違うから。
オスはたくさんのメスを獲得する野望に燃えています。メスは派手好みなので、モテるためには派手にならざるを得ないのです。
一方、メスは育児が担当。草むらの巣にじっと座り卵を温めなければならないので、天敵に見つからないように地味じゃないと困るんです。

なんだかオスは楽をしているみたいですが、この方がオスはより多くのメスと交尾をして子孫を残すことができ、メスはモテるオスの遺伝子が自分の子どもに授かるので、合理的なのです。雛は生まれてすぐに自力で食べものがとれますから、メスのワンオペ育児でも心配ありません。

キジは意外と身近にいる鳥です。とくに春はオスの雄叫びが連発するので見つけやすい時期。独特な「ケンケーン」の声が聞こえたら、音がする方向を注視してください。きっと赤い顔が見えるはずです。

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柴田佳秀

科学ジャーナリスト・サイエンスライター
東京都出身、千葉県在住。元テレビ自然番組ディレクター。
野鳥観察は小学生からで大学では昆虫学を専攻。鳥類が得意だが生きものならばジャンルは問わない。
冬鳥が続々とやってくる秋が好き。日本鳥学会会員。

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