新鮮な旬の魚を生、湯引きなどで味わう刺身。欠かせないものは、醤油、器、刺身包丁の切れ味。料理人の技。
そして、今回のお話、刺身に添えられているつま野菜です。
見た目に美しく盛りつけられたつま野菜をみると、ちょっと心が癒され、季節感を感じて嬉しくなります。ツンとした辛味や香りによって、刺身をより美味しくいただけます。
代表的なつま野菜と言えば、大根のけん。
細く尖っていることから漢字は剣。
食べやすく、味わうために、大根のけんの長さは、三寸(10cm弱)と口承されていて、他には胡瓜、人参、ウド、ミョウガ、南瓜、ラディッシュなどで、けんを作ります。

つまは用途によって名前があります。
大葉、胡瓜の葉、菊葉、柿の葉など主に葉を使う「敷きづま」。
花穂(はなほ)、小菊、赤じその紫芽(むらめ)、青じその青蓼(あおたで)、紅蓼(べにたで)、防風。刺身にたてかけるように添える「立てづま」やおろしわさびの隣などに添える「脇づま」。おろしわさび、大根、しょうがなどの「辛味」。

広義では「けん」「つま」「辛味」を含めて「つま」とします。
漢字は褄または妻があてられます。褄は着物の裾の左右両端部分をさしますが、ここでは、刺身の端に添えるもののこと。
つま野菜は、主役の刺身を一段と美しく引き立てるための脇役です。
季節感の演出を魚の種類、器の調和と合わせます。「山水盛(り)」は、奥を高く山に見立て、そこから海へ流れる川のように低く置いていきます。
大根のけんを置き、大葉を左斜め上方向に敷き、刺身を盛り、箸が右手前から入ることを意識して、食べやすいように右端におろしわさびや紫芽や紅蓼を添え、花穂や小菊をあしらいます。
私はつま野菜を専門に扱う市場の仲卸に勤めていた経歴をもっていて、季節ごとのつま野菜に触れることができました。今の季節は、新緑の美しさや涼しげな演出をする、青もみじ、胡瓜の葉、花付き胡瓜が人気です。

つま野菜は全国各地で栽培されていますが、愛知県、中でも豊橋市は盛んな産地で、その多くが生産量日本一です。明治43年にガラス温室でメロン栽培を始め、当時では全国に類をみない最新技術を受け継ぎ、どの刺身にも使いやすい大葉を通年安定出荷できるようになりました。
つま野菜の中でも、大葉、わさび、小菊、大根などは、防腐や食中毒の予防、解毒、消化作用の役割を担っています。刺身に合う濃口醤油が広く普及した江戸時代からの知恵は、今も活かされています。

今から53年前に誕生した花穂(はなほ)も豊橋です。
小さな穂先に紫色の可憐な花がついています。目にされた方も多いのではないでしょうか?
軸をのぞいた花を醤油に落として、刺身と一緒にいただきます。小菊の花びらも同じ食べ方をします。繊細な刺身の味をそこなわないほのかな香りを楽しみつつ、生魚特有の臭いを消してくれるので、口の中がさっぱりします。次の料理の味をいただけるように整えてくれるのです。

今回、豊橋温室園芸農業協同組合花穂・ほじそ部会の方に花穂について伺いました。夏と冬で2品種あり、夏の品種は暑さの中でも安定出荷できるものを採用して栽培し、冬の品種は紫色になる特性があるそうです。天候や気温によってかなり左右されるそうですが、一年を通して安定して上質の花穂を作り上げること、和食にとどまらない和のハーブとして、新しい食べ方を展開されています。

つま野菜は、百貨店や高級スーパー等の野菜売場にある冷蔵ケースに並んでいます。私もイタリア料理に、つま野菜を買って、けんを作ってあしらってみました。定番のお刺身から、焼き肉、サラダ、スープ等々につかうと、おうちの食卓が華やかになり、ちょっと会話も弾みそうです。
「おうちでつま野菜」日本料理の伝統に触れながらも、どこか新しい。晩春の過ごしやすい季節、バルコニーや窓辺でいただくと、ちょっと気分が上がりそうです。


川口屋薫
料理人
Le btagev(ルブタジベ)代表。大阪出身。料理人。珍しいやさいの定期便をしています。風薫る季節5月が過ごしやすくて一番好きです。イタリア在住中、ヨーロッパ野菜に恋し、日本の野菜が恋しくなったのをきっかけに野菜に関わる仕事をしています。 趣味 囲碁
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