ミンミンとセミが鳴く声を聞きながら、パタパタと涼をとる。
竹でできた骨のしなりと和紙の柔らかさが、やさしい風を送り込んでくれる「団扇(うちわ)」。
もともと団扇は「あおぐ」ためではなく「かざす」「はらう」ための道具として使われてきました。

原型は、柄の部分が長い翳(さしば)というもので、日本には古墳時代に中国から伝わったと言われています。位の高い人が顔を隠したり、虫を追い払ったりするのに使われ、その様子は、奈良県明日香村の高松塚古墳の壁画にも描かれています。
当時は木材を原料に、羽毛や絹などを貼った高級素材でつくられていました。
やがて室町時代には竹と和紙で作られるようになり、送風力は飛躍的にあがりました。

江戸時代になると一般庶民にも広がり、団扇の使われ方は大きく変わりました。
あおいで暑さをしのいだり、ご飯を炊くときに火を起こしたりするなど「暮らしの道具」として活躍し、今のかたちの原型となりました。
同時に、和歌や漢詩、浮世絵などの絵柄が描かれたものが多く出回るようになり、「鑑賞して楽しむ」という使われ方が流行しました。
その後、明治時代から昭和時代にかけては印刷技術の発達により「広告媒体」として配られるようになりました。お店の名前や映画の俳優を印刷したものや、プラスチック製の団扇が登場しました。

こうして時代とともに発展してきた団扇ですが、最近では便利な家電の登場により、使う機会は少なくなりました。
「 久しぶりに団扇を使ってみたい」
「どうせ使うなら、お気に入りの団扇がほしい」
この記事を書きながらそんな気持ちがフツフツと湧いてきたので、私の住む奈良県にある創業170年の専門店で、こんな団扇を選んでみました。

これは、「奈良団扇」といって、もともとは春日大社の神職が儀式のためにつくったのが始まりなのだそう。今では県内で1軒のみがこの技術を受け継いでいます。
天然の染料で染められた、和紙。
鹿と自然が描かれた、透かし彫り。
竹でできた柄と、細やかな骨組み。
はじめてこの団扇であおいだときは、想像以上の「心地よさ」に驚きました。
少ない力でたくさんのやさしい風を運んでくれる。
また、かすかに感じる和紙の香りや、ハタハタと鳴る小さな音もからだに心地よく響いて、時間を忘れてボーッとしたくなりました。

ふと見ると、透かし彫りに柔らかな光が入り込んできます。
機能としてだけではなく、そこにあるだけで涼を感じる景色が広がる奈良団扇。すっかり気に入ってしまい、これからの季節には欠かせない相棒となってくれそうです。
扇風機やクーラーに頼ることが多いですが、団扇であおぐ夏もまた、心地よい涼しさを運んでくれるかもしれませんね。

松下恭子
うつわ屋 店主・ライター
神奈川県出身、2019年に奈良市へ移住。
好きな季節は、春。梅や桜が咲いて外を散歩するのが楽しくなることと、誕生日が3月なので、毎年春を迎えることがうれしくて待ち遠しいです。奈良県生駒市高山町で「暮らしとうつわのお店 草々」をやっています。好きなものは、うつわ集め、あんこ(特に豆大福!)です。畑で野菜を育てています。
暦生活のお店
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注染手ぬぐい「丸窓の風景 夏あさがお」
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