こんにちは、和菓子女子のせせなおこです。
夏の和菓子といえば、寒天や水ようかんなど涼しげなものが多くみられますが、私の中で夏の和菓子といえば「わらび餅」が思い浮かびます。
家から30分ほどのところにある昔ながらの和菓子屋さん。近所の子ども達がお小遣いを握りしめてやってくる昭和にタイムスリップしたような、とてもほっこりした気持ちになれるお気に入りのお店です。
この和菓子屋さんでは、毎年夏の時期だけわらび餅が販売されます。注文を受けてから作ってくれて、その場でかけてくれるきな粉がそれはとてもいい香り。もちもちの弾力にふわふわのきな粉。私の夏の風物詩となっています。
そんなわらび餅ですが、本物のわらび粉を使った真っ黒なものやあんこが入っているもの、抹茶が入ったもの、形をみても丸に四角と実はとても種類が豊富です。真っ黒なわらび餅やあんこの入ったわらび餅に出会った時はとても衝撃的で、なんだかソワソワしながら味わったのを覚えています。
本来、わらび餅というのは名前の通り、わらびの根から取れるでんぷんを粉末状にしたわらび粉を水や砂糖と合わせ、練り上げたもの。実は本物のわらび粉は真っ黒なのですが、多くはわらび粉に似た食感の葛や片栗粉、タピオカなどで代用されます。
その理由はわらび粉になる根は細く、原料全体から約5~6%しか取れないこと、さらに近年わらび粉を収穫する方の高齢化や、重労働による人手不足により生産量が減少しています。そのため、とても貴重で高価な素材で、100%わらび粉のみでできているわらび餅はごく稀にしかみられません。
そういえば、お気に入りのお店に行けない時は家でわらび餅を作っていました。お鍋で透明になるまでひたすら練る作業はとても暑く、大変でしたが、なんだか職人さんになった気分でとても楽しかったのを覚えています。
言葉としては馴染みのあるわらび餅ですが、人それぞれ思い浮かべるものが違い、また、そこにはそれぞれのストーリーがあるはず。なつかしさに浸ることができるのも和菓子の魅力の一つだなと思います。
今年も暑い夏がやってきました。早速夏を味わいに、わらび餅を買いに行こうと思います。
写真提供:せせなおこ
せせなおこ
和菓子コーディネーター
福岡県出身。あんこが大好きな和菓子女子。和菓子を好きになったきっかけはおばあちゃんとつくったおはぎ。ぽかぽか暖かい春が好きです。おいしい和菓子を求めて全国を旅しています。
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