こんにちは。科学ジャーナリストの柴田佳秀です。
ここ数年、夏があんまり暑いので、秋が来ないんじゃないかと毎年心配になりますが、9月に入るとさすがに吹く風が心なしかひんやりしてきて少しは秋めいてきますね。そんな秋の気配を感じる頃になると、鋭い声で鳴きはじめる鳥がいます。それが今回紹介するモズです。

モズは、大きさ20cmほどの頭がちょっと大きめに見える小鳥です。起き上がった姿勢で枝にとまり、円を描くように尾羽をぐるぐる回す仕草がちょっと面白い鳥でもあります。全国の河川敷や農耕地、公園などの開けた環境で一年中普通に見られますが、南西諸島では希にしか現れないほか、寒さが厳しくなる北海道や山の上では冬にはいなくなります。


日本には春のウグイスや夏のホトトギスなど、季節を告げる鳥がいろいろいますが、秋を告げる鳥といえば、このモズですね。よく目立つところにとまって、「ギュン、ギュン、キーキー、キリキリキリ」と鋭い声で鳴き、これは“モズの高鳴き”と呼ばれ秋の風物詩として知られています。
じつはこの高鳴き、早いところでは8月下旬から鳴きはじめるので、ちょっと秋には早いんじゃないかなと思うこともあります。それでも最盛期は9月から10月なので、やっぱりこの声を聞くと秋が来たなあと実感します。

高鳴きは、縄張り宣言の鳴き声です。多くの鳥では、縄張り宣言はオスの仕事。ところがモズの場合は、珍しいことにオスもメスも宣言します。これは雌雄ともそれぞれが縄張りをかまえるため。モズの秋の縄張りは食糧確保が目的で、主な獲物である昆虫やトカゲが少なくなる寒い季節になる前に、狩りの場を確保しておかないとならないのです。ですから、春はいっしょに子育てをしていたパートナーが相手でさえも、秋になると容赦なく戦い、その豹変ぶりには面食らってしまいます。

モズの興味深い習性は他にもあります。ハヤニエです。イケニエではなくてハヤニエです。捕った獲物を食べずに枝やトゲなどに刺しておく習性をモズのハヤニエと呼びます。高鳴きによって縄張りが確定すると、カエルやトカゲ、バッタ、小魚などを捕っては次々と刺してハヤニエを作ります。トゲに突き刺されてカエルが死んでいるのですから、ちょっとその光景はホラーな感じ。習性を知らない人が見つけたらどう思うでしょうね。

さて、そのハヤニエを作る理由は長い間、謎とされてきました。しかし、最近の研究で食べものを貯えるための行動だということがようやくわかってきました。干からびて忘れられているようなものもありますが、追跡するとちゃんとなくなるので保存食なのでしょう。また、ハヤニエを作るのは、今のところオスだけということもわかっています。では、なぜオスだけがハヤニエを作るのでしょう。

モズは求愛するときに、オスがラブソングを歌ってメスを口説きます。そのラブソングは、短い時間に細かい音がたくさんある方がメスにモテるんだそうです。要するにメスは早口で歌うオスが好きなんですね。ハヤニエの数と早口の関係を調べると、ハヤニエの数が多いと早口になっていたんだそうです。要するにハヤニエをたくさん食べて栄養状態が良くなったので、早口になったのです。ハヤニエをたくさん作るオスは、それだけ収入が多いことになります。

たくさん食べて元気になり、ラブソングを早口で歌える。早口ソングは高収入な男の証。そりゃメスにモテるわけです。以前、雑談でこの話を早口でしたら、ある女性から「私、早口の人は嫌い」と言われてしまいました。人間の世界では早口=高収入とはならないので、モズのようにはいかないのです。

柴田佳秀
科学ジャーナリスト・サイエンスライター
東京都出身、千葉県在住。元テレビ自然番組ディレクター。
野鳥観察は小学生からで大学では昆虫学を専攻。鳥類が得意だが生きものならばジャンルは問わない。
冬鳥が続々とやってくる秋が好き。日本鳥学会会員。
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