茗荷みょうが

旬のもの 2021.09.17

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漬物男子、田中友規です。

今日はみょうがのお話です。
漢字で書くと茗荷、読めるけど書けない野菜ナンバーワンかもしれません。

この名前の由来は、お釈迦様と一人の弟子の逸話から。
その弟子は、生まれつき物覚えが悪く自分の名前が覚えられなかったそうで、
自分の名前を書いた板を背中に背負っていたそう。
毎日掃除をするように、とのたった一つのお釈迦様の教えを一生懸命に続け、
ついには悟りを開き最も優れた弟子となったと言い伝えられています。

彼の死後、墓から見慣れぬ植物が生えてきたのが後の「みょうが」であり、
「名」を「荷う」弟子の姿に倣い、この茗荷の漢字を使うようになったといいます。

なるほど、この話を聞けばもう漢字を忘れることはない!と感心しましたが、
逆に、みょうがを食べすぎると物忘れがひどくなる、という言い伝えもあるようです。
それにしてもこの夏も、たくさんのみょうがを食べましたが
どの料理もしっかり覚えていますから大丈夫。

漬物といえば、忘れてはならないのが柴漬けです。
初夏の梅干し作りの副産物、赤梅酢で漬け込む漬物で、
天然色のドレスを纏った漬物界の麗しき女王様。
僕の中で柴漬けは女性名詞なのです。

写真提供:田中友規

柴漬け

<材料>
・茄子 1本
・きゅうり 1本
・みょうが 3個
・生姜 ひとかけ
・赤梅酢 200cc
・塩 全体の3%程度


<作り方>
①食べやすいサイズに切った野菜を塩で揉み、しばらく馴染むまで置きます。
②水分が出てきたら、一度水を切って赤梅酢で漬け込みます。
③冷蔵庫で保存し、乳酸発酵が進み酸味が出てきたら完成です。

この柴漬け、もちろんそのまま食べても美味しいですが
ぼくが愛してやまないのがしめ鯖との組み合わせです。

京都寺町二条のとあるお寿司屋さんでは、しめ鯖と柴漬けの海苔巻が
「いそ巻」という名前で人気を博しており、
いつも近所の人たちが入れ替わり立ち替わり訪れ、注文はひっきりなし。
酢飯、しめ鯖、赤梅酢・・・書いているだけで思わず垂涎。
自宅で作るにはちょっと一手間ですが、試してみてほしい組み合わせです。

写真提供:田中友規

この赤い女王の美しさに魅了されたのは日本人だけではありませんでした。

僕がデザインした漬物ポット「Picklestone」を使って、アメリカのコラムニストが
新聞で柴漬けを紹介してくれたことがあります。

マゼンタのピクルスは、世界共通で美しいと感じてもらえたことが誇らしく、
また自分がデザインしたプロダクトをきっかけに、
柴漬けの美味しさが世界に広がる一翼を担うことができたことも、
漬物デザイナーとして大変光栄な出来事でした。

写真提供:田中友規

夏のみょうがはその爽やかな香りと食感で、ついつい食べすぎてしまいますが
デザインの力で漬物を世界に広げたい、という初心を忘れないようにしたいものです。

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田中友規

料理家・漬物男子
東京都出身、京都府在住。真夏のシンガポールをこよなく愛する料理研究家でありデザイナー。保存食に魅了され、漬物専用ポットPicklestoneを自ら開発してしまった「漬物男子」で世界中のお漬物を食べ歩きながら、日々料理とのペアリングを研究中。

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