こんにちは、料理人の庄本彩美です。今回はのど飴で有名な「カリン」についてのお話です。
カリンの果実は梨を更にジャリジャリにしたような食感らしく、渋みが強すぎて、そのまま食べることができないそうだ。カリンは果実酒やシロップなどに加工して楽しむことができる。
また、カリンの実は大変いい香りがするため、観賞用や芳香剤として重宝されてきたという。

私がカリンを初めて見たのは看護学生時代、実習先の病院だった。
療養中のおばあちゃんのために、旦那さんが病院の中庭で拾って来たカリン。のど飴と同じ様な香りながらも、思っていたより芳醇なものだった。暖かい病室に漂うカリンの香りは、冬が訪れる前の、晩秋の優しい香りとして記憶に残っている。

カリンの木は、成長すると木肌にうろこのような綺麗な模様が現れ、春に白やピンクのかわいい花が咲く。花・果実だけでなく新緑・紅葉も楽しめるため、家庭果樹として好まれているそうだ。また、語呂合わせで「金は貸すが借りない」の縁起を担いで庭の表にカリンを植え、裏にカシノキを植えると商売繁盛に良いそうだ。

とても縁起が良さそうだが、これまで私はカリンが庭先に植えられている家を見たことがない。カリンは剪定すれば、そこまで大きくもならないそうだが、私のように庭に植えるなら食べられる木が良い、なんて思う人が多いのだろうか。

カリンの木は庭園や寺社で多く見ることができる。しかし、その際カリンは「安蘭樹(あんらんじゅ)」という名前で記載されていることがあるそうだ。
これは、仏教と関係がある。古代インドに天竺五精舎(てんじくごしょうじゃ)というお釈迦様が説法した5つの代表的な寺院があった。
そのひとつに、菴羅樹園精舎(あんらじゅおんしょうじゃ)という名の寺院があり、元々マンゴーの果樹園だったそうだ。

マンゴーは仏教ではお釈迦様にまつわる尊い木とされていたが、インドから中国そして、日本に伝わる間のどこかで、「マンゴー」がいつの間にか「カリン」となって伝わってしまったという。
「菴羅(あんら)」は元々、マンゴーを意味する言葉だったらしいが、間違って伝わった過程で、カリンは当時、菴羅樹と呼ばれ、後に安蘭樹と書くようになった。
確かに見た目と良い香りがするという点では、間違えても仕方がないかもしれない。また実際、中国やインドと異なって、マンゴーの栽培は気候的にも難しかっただろう。

マンゴーと間違えられたカリンだが、さらに他の果実とも混同される事がある。実際に長野県では「カリン」というと「マルメロ」という果物を指すことが多く、ジャムや生食として消費されている。マルメロもカリンとよく似ているが、表面に生毛が生えていて、よく見れば違いがわかる。

様々な物語があるカリン。昔は10月ごろになると果物屋に並ぶことも多かったようだが、今ではめっきり生産量も減っているという。近所でカリンの木やお店に並ぶカリンを見つけられたら、それこそ縁起が良いのかもしれない。

庄本彩美
料理家・「円卓」主宰
山口県出身、京都府在住。好きな季節は初夏。自分が生まれた季節なので。看護師の経験を経て、料理への関心を深める。京都で「料理から季節を感じて暮らす」をコンセプトに、お弁当作成やケータリング、味噌作りなど手しごとの会を行う。野菜の力を引き出すような料理を心がけています。
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