朝晩はひんやり冷たく、草木はだんだんと色づき始める。
そんな秋が深まりはじめる9~10月に、ひときわ存在感のある花「シオン」が咲きはじめます。

シオンは大きいものだと草丈2メートルほどにもなる、キク科シオン属の多年草。
放射状に広がる花びらが特徴で、薄紫やピンク、白、青など淡く明るい色が秋の景色を華やかに彩ってくれます。
シオンは、漢名では「紫苑」と書き、薄紫色の花びらに由来します。
また、シオン属の学名を「Aster (アスター)」と言い、これはギリシア語の「aster(星)」が語源になっていて、星のように放射状に伸びる花びらの姿にちなんでいると言われています。

そんなシオンの花言葉は「追憶」「君を忘れない」「遠方にある人を思う」。
この花言葉は、平安時代の『今昔物語』に出てくるある二人の兄弟の話が由来になったと言われています。
最愛の父を亡くした兄弟は、嘆き悲しみ、毎日墓参りをしていました。
やがて兄は、墓参りに行けなくなるほど仕事が忙しくなったので、悲しみを忘れるために「忘れ草」を墓へ植えました。
一方で弟は父を忘れたくない気持ちから、シオンを墓に植えて、一人で墓参りを続けました。しばらくすると、父のことを想う弟の心に感心した鬼が出てきて、弟に予知能力を与え、弟はその後幸せに暮らしたというお話です。

私はこの話を聞いたとき、忘れ草を植えた兄も、シオンを植えた弟も、どちらの気持ちも分かると思いました。
悲しいことを断ち切りたい兄の気持ちと、ずっと心に留めておきたい弟の気持ち。もし、私が二人と同じ状況になったら両方の気持ちが入り混じるだろうなと思います。
ただその中でも弟がシオンを植えたのは、悲しみ以上に父と過ごした「楽しい思い出」が多くて、その気持ちを心の栄養にしたかったのだろうな、と勝手に解釈しました。

人は、長く生きていると辛く悲しい場面にもたくさん出会います。それを100%忘れることはなかなか難しいですが、心の引き出しにしまっておいて、時折思い出すことで次へ進む大きなステップになることもあるだろうと思います。
そう考えるとシオンは「忘れない」を通じて、現実に対峙しながらも前に進む後押しをしてくれる、そんな花なのかもしれませんね。
今日もシオンから、ささやかな癒しと明日への力をもらって。
秋の深まりを堪能できますように。
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