ルリビタキ

旬のもの 2021.12.04

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こんにちは。科学ジャーナリストの柴田佳秀です。

12月は私が一番好きな月です。好きな理由の「その1」は自分の誕生日があるから。もう歳を重ねて喜ぶ年齢ではないのですが、やっぱり嬉しいものです。「その2」はクリスマスがあるから。「その3」は忘年会。パーティーシーズンなので、イベント好きな私にとって12月はウキウキ気分になります。

じつは、鳥を見るのも12月はウキウキする月です。なぜなら、たくさんの鳥と身近な場所で出会えるから。日本の平地の多くでは、冬は見られる鳥の種類が夏より増えるので、12~2月にかけてがバードウォッチングに最適な期間なんです。また、木の葉が落ちて、森の小鳥が見やすくなるというのもありますね。

今回、紹介するルリビタキも、寒くなると本州や四国、九州の平地で見ることができるスズメくらいの小鳥です。
オスは脇腹がオレンジ色で、体上面は目の覚めるような美しい青色をしています。メスは全体が明るい褐色ですが、オスと同じように脇腹がオレンジ色。雌雄どちらもヒタキ科特有のくりっとした目がかわいい小鳥です。

オス 写真提供:柴田佳秀
メス 写真提供:柴田佳秀

ルリビタキは、春から夏にかけては北海道と本州や四国の亜高山帯の針葉樹林で子育てをしています。初夏の山登りで「ピッチョロチョロチョロリ」という囀(さえず)りが聞こえると「ああ、ずいぶん登ってきたんだな」と実感します。
この声を若者バードウォッチャーは、「ルリビタキだよ」と聞こえるというのですが、さすがにそれは無理があるなあと思うのです。でも、そんな風に自分流の発想で鳥の声を覚えるのは楽しいですね。

写真提供:柴田佳秀

そんな山の上で子育てをしていたルリビタキは、冷たい北風が吹く11月末になると平地の林に姿を見せるようになります。市街地でも樹木の多い公園ならばたいてい生息しているので、鳥の写真を撮る趣味の人達には大人気。さながら公園のスターといった存在です。こんなすてきな青い小鳥なんですから、みなさんが夢中になるのも無理はないですね。

写真提供:柴田佳秀

冬の林では、夏の涼しげな囀りとはちがい「ヒッヒッヒッ」と鳴きます。この声がジョウビタキという小鳥とそっくりで鳴き声だけでは判断に迷うことがよくあります。
普通、ジョウビタキは開けた明るいところにいるのに対し、ルリビタキは林の暗いところにいるので、環境でどちらか判断をするのですが、生きものには例外がつきもの。明るい林縁にルリビタキがいたことがあるので、確実なのはやはり目で確かめるほかないです。

写真提供:柴田佳秀

ルリビタキに会うには、「ヒッヒッヒッ」の声がたよりです。林の中をゆっくりと歩きながら声を探します。そして、声が聞こえたら立ち止まってその方向に注目。きっと低い枝と地面を行ったり来たりするルリビタキの姿が見つかるでしょう。
少し高い所から地面にいる越冬昆虫を探し、見つけるやいなや飛びついて食べているのです。また、植物の実も食べます。以前、私はリュウノヒゲという草の果実を食べているのを見たことがあるのですが、それを食べたルリビタキの糞は、体と同じきれいな青色でした。幸せの青い鳥は糞まで青いんだと、妙に感心したことを覚えています。

写真提供:柴田佳秀

もっとルリビタキを間近で見るにはコツがあります。それはよく動きを観察すること。注意深く見ていると、よくとまる場所がわかってきますから、その近くに先回りして静かに待ちます。すると目の前に美しい姿のルリビタキが現れてくれます。
追いかけまわしていては鳥との距離はいっこうに縮まりません。ルリビタキの気持ちになって待っていると、向こうから近づいてきてくれます。優しい気持ちで接すれば、きっと感激の出会いが訪れることでしょう。

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柴田佳秀

科学ジャーナリスト・サイエンスライター
東京都出身、千葉県在住。元テレビ自然番組ディレクター。
野鳥観察は小学生からで大学では昆虫学を専攻。鳥類が得意だが生きものならばジャンルは問わない。
冬鳥が続々とやってくる秋が好き。日本鳥学会会員。

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