謹んで新春のお慶びを申し上げます。俳人の森乃おとです。
このたびは、新しい年のはじまりを寿(ことほ)ぐ花と賞されてきたフクジュソウ(福寿草)を紹介します。

盆に寄せ植えにして正月の室内に
フクジュソウはキンポウゲ科フクジュソウ属の多年草で、日本のほか、中国東北部、朝鮮半島、ロシア・シベリアに分布。日本では北海道から九州までの山地・平地に広く自生しています。
旧暦の正月に当たる2月から3月にかけ、いち早く金色の花を開くので、「元日草(ガンジツソウ)」や「朔日草(ついたちそう)」などの別名でも呼ばれました。
「幸福」と「長寿」を名前に含むめでたい花とあって、赤い実をつけるナンテンなどと共に盆に寄せ植えにし、正月の室内に飾る風習が、江戸時代の初期から広がりました。ナンテンも名前が「難転」に通じるので、火事などの災厄を退けてくれると信じられていました。

典型的な「春の妖精」の一つ
春にいち早く花をつけて葉を広げ、夏には地上部が枯れて、翌年の春まで完全に姿を消してしまう一群の植物があります。カタクリやイチリンソウ、ニリンソウなどで、「春植物」や「スプリング・エフェメラル(春のはかない命、春の妖精)」などと呼ばれます。
フクジュソウも典型的な春植物で、苞(ほう)に包まれた短い茎の上に花だけがつきます。この時の体高は10~20㎝足らずですが、次第に茎や葉が伸び、体高が50㎝を超えることも。しかし、梅雨の頃には地上部はすべて枯れてしまい、翌春まで休眠に入ります。

日本のフクジュソウは4種類に
以前は日本のフクジュソウは単一種とされていましたが、現在では4種類に整理されています。染色体数が4倍体のフクジュソウ(学名Adonis ramosa)と、2倍体のミチノク(陸奥)フクジュソウ、キタミ(北見)フクジュソウ、シコク(四国)フクジュソウです。
茎が中実か中空か、花弁と咢(がく)の長さの関係など、多少の違いはありますが、どれも似ています。
花径は3~4cm、花弁の数は11~15枚。葉は3回羽状複葉。根茎は太く、黒ずんでいます。

花の色はいずれも金色ですが、江戸時代に品種改良されたものには、朱色や白もあります。
アイヌ民族の叙事詩ユーカラでは、フクジュソウの花の色は「神の光」と形容されました。
ユーカラにはほかにも、イタチの仲間のテン(貂)と結婚するのを拒んで姿を隠し、草に変えられてしまった美しい霧の女神クナウの話もあります。クナウ・ノンノ(ノンノはアイヌ語で「花」の意)はテンが活動する期間は姿を隠すとされ、フクジュソウが夏には見られない理由を、説明する話になっています。

ちなみにキンポウゲ科の植物は有毒なものが多く、フクジュソウも全草が有毒。毒性が強く、死に至ることもあります。若い芽はフキノトウに似ており、葉はヨモギの葉と混同することもありますので、ご注意を。
フクジュソウは正月の季語。江戸時代から多くの名だたる文人・俳人が俳句に詠んでいます。『好色一代男』をはじめとする浮世草子などを手掛けた大作家に、もう正月だから咲けと喝を入れられると、花としては咲かないわけにはいかないでしょう。
ほかには次のような俳句があります。


蕪村の句の「弓師」は弓作りの職人。正月のすがすがしい空気が伝わります。また夏目漱石は、尾形光琳が屏風に描くフクジュソウの花を詠みます。華麗な琳派の画家の題材として、フクジュソウはいかにも似つかわしいと思われます。
花言葉は、「永久の幸福」「祝福」「幸せを招く」。明るく輝くような黄金色に開くフクジュソウにふさわしい言葉が並びます。2022年が皆さまにとって、良き年でありますように。
フクジュソウ(福寿草)
別名 元日草(ガンジツソウ)、朔日草(ツイタチソウ)
学名Adonis ramosa
英名forked-stem adonis
キンポウゲ科フクジュソウ属の多年草。日本、中国、ロシア、朝鮮半島に分布。
花期は2~4月で、葉が開く前に金色の花をつける。草丈は10~40cm。夏には地上部は枯れて休眠する。

森乃おと
俳人
広島県福山市出身。野にある草花や歳時記をこよなく愛好する。好きな季節は、緑が育まれる青い梅雨。そして豊かに結実する秋。著書に『草の辞典』『七十二候のゆうるり歳時記手帖』。『絶滅生物図誌』では文章を担当。2020年3月に『たんぽぽの秘密』を刊行。(すべて雷鳥社刊)
暦生活のお店
-
クリスマスの箸置きセット / ツリー・くつした・ジンジャーマン
1,870円(税170円) -
注染手ぬぐい「日本のツリー 青ぼかし」 / かまわぬ
1,430円(税130円) -
ゆきだるまとっくり
2,970円(税270円) -
ちいさな縁起物のお守り
550円(税50円) -
手づくりガラスの「鏡餅」
1,320円(税120円) -
福々十二支 金の辰(金箔入り)
1,100円(税100円) -
手づくり干支硝子 金の蒼龍(金箔入り)
1,650円(税150円) -
注染手ぬぐい「しめ飾り」 / かまわぬ
1,760円(税160円) -
注染手ぬぐい「願掛けてぬぐい 招き猫」 / かまわぬ
1,430円(税130円) -
新年の富士山を描いた手ぬぐい
1,430円(税130円) -
注染手ぬぐい「椿南天」 / かまわぬ
1,430円(税130円) -
ぽち袋「ひとふで辰」
330円(税30円) -
ぽち袋「たつのこ」
330円(税30円) -
ぽち袋「福呼び辰」
330円(税30円) -
お年賀手ぬぐいセット(南天・たつのこちらし・紅白梅)
4,114円(税374円)