こんにちは。気象予報士の今井明子です。
今日は空の素敵な現象についてお話しします。
皆さんは、「天使のはしご」を見たことはありませんか?
雲の隙間から太陽の光が放射状に漏れて、光のカーテンのようになっている現象です。
とても神々しく、発見すると思わずため息がもれます。確かに天使が舞い降りてきそう。つくづく「天使のはしご」とはうまい例えだと思います。
この「天使のはしご」は、「光芒(こうぼう)」または「薄明光線」とも呼ばれています。
「薄明光線」は、日の出や日没直前になるともっと面白い見た目になります。
夕焼け空が、カラフルな放射状の帯で彩られ、まるで光のイリュージョンのよう。見つけると、「うわぁ~!」と声をあげたくなるほど美しく、不思議な光景です。
このような空は「天割れ」とも呼ばれています。
このさまざまな色の帯の正体は、太陽をさえぎる積乱雲の影です。夕焼けの赤い空に、影の部分が青い筋となって伸びて、空がカラフルな放射状の帯のように見えるのです。
ときには光の帯が太陽の反対側の空にまでのびて収束することもあります。これを「反薄明光線」といいます。
沖縄の八重山地方では、反薄明光線のことを「風の根(カジヌニィー)」と呼んでいます。そして、「風の根が現れるのは大風の兆し」という言い伝えもあります。
なぜ、大風の兆しなのでしょうか。それは気象学的にも根拠があるのです。
まず、夕方に薄明光線が現れるような空というのは、日没の方向、すなわち西のほうに積乱雲があるということです。そして、光の帯が太陽と反対側にまでのびるようなときは、空全体に水滴がたくさん浮遊しているのです。空がこんな状態になるのは、まさに台風が接近しているとき。確かに、台風は積乱雲の塊ですからね。
昔は気象衛星がなかったので、台風がいつやってくるのかはわかりませんでした。しかし、ひとたび台風が訪れれば大変なことになります。沖縄地方であれば、台風は勢力が強い状態で接近・上陸しますので、なおさら大きな脅威となります。そこで、空の状態を見て天気予報を行い、災害に備えていたのではないでしょうか。天気にまつわる言い伝えは侮ってはいけない先人の知恵なのです。
今井明子
サイエンスライター・気象予報士
兵庫県出身、神奈川県在住。好きな季節はアウトドア・行楽シーズンまっさかりの初夏。大学時代はフィギュアスケート部に所属。鯉のいる池やレトロ建築をめぐって旅行・散歩するのが好き。
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