こんにちは。和菓子コーディネーターのせせなおこです。
新しい年を迎えると、新年を祝うおめでたい和菓子や縁起の良い和菓子をよく見かけるようになります。気温的には最も寒い今の季節ですが、気持ち的には少しずつ冬の終わり、そして春の訪れを感じることが増えてきます。まだまだ寒いこの季節に春を感じさせてくれるお菓子が、今回のテーマ「椿餅」です。
椿餅は2枚の椿の葉っぱであんこを包んだ道明寺粉(餅米を砕いたつぶつぶのもの)のお餅を挟んだお菓子。椿の旬である冬から春にかけて販売されます。お店によってはお餅を寒天でコーティングしていたり、生地にニッキが練り込まれて茶色をしていたりするものもあります。
もともと椿は縁起がいい植物で、邪気払いの意味をもっています。そして、花が少ない中美しく咲く椿の花に、春を待ち侘びる気持ちを込めて葉っぱで挟むんだそうです。
椿餅は京都や奈良、東京などでは見かけますが、私の育った福岡ではあまり馴染みがないものでした。葉っぱで包んであるお菓子といえば、春の桜餅や柏餅。椿餅を始めてみた時、なんて美しいお菓子なんだろうと感動しました。なんとこの椿餅、日本で生まれた初の上生菓子だといわれています。
椿餅が生まれたのは平安時代。椿餅は天皇や貴族が行っていた蹴鞠の合間のおやつとして食べられていました。源氏物語の中にも描かれています。和菓子といっても当時は果物や木の実。そんな中、椿餅は甘葛(あまづら)という木の蔦からわずかしか取れない貴重な甘味料を使って作られた餅菓子だと考えられています。
椿餅の存在を知った時、「約1,000年前の平安時代の人と同じ和菓子を食べているのかー!!!」ととってもワクワクし「和菓子を食べることで昔の人と繋がれる、まるでタイムスリップだな」と思ったのを覚えています。和菓子を次の世代につなげたいと、これほどまでに私を和菓子好きにしてくれた、そんなとても大事な和菓子の一つです。
近くのお店をみてみたり、最近ではお取り寄せできるお店も増えていたりするのでぜひ探してみてください。寒いとどうしても体に力が入りがち。頭の片隅で春を楽しみにしつつ、もうしばらく冬の美しさを感じながら過ごしたいものです。
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