桜が開花しはじめました。
ピンク色に染まった街並みと、顔をほころばせながら歩く人たちで賑やかになる季節ですね。

桜は、満開のときは華やかで美しいですが、ハラハラと散っていく様子もまた味わい深いものがあります。道端に桜の花びらが落ちて、絨毯のような景色を見せてくれることもあります。その様子を日本人は古くから、「切ない」感情や「出会い」や「別れ」に結びつけて、和歌などで表現してきました。風景に心情を重ねる、日本人の繊細さを象徴しているようですね。

さて、そんな風情ある桜ですが、海岸でも楽しめる「桜貝」というものがあるのをご存知でしょうか。
よくおみやげもの屋さんでネックレスやピアスになっている、あのピンク色の貝殻のことです。晩秋から春にかけて海岸に打ち寄せられることが多く、まるで本物の桜の花びらのような佇まいで、海岸の景色を彩ってくれます。

桜貝は、幅1〜2cmの2枚貝のことをいい、水深10m〜20mのところに生息しています。ひとくちに桜貝といってもその種類は豊富で、桜貝のほか、ベニ貝、カバザクラ貝、モモノハナ貝などの総称を「桜貝」と呼びます。

ただ、桜貝は海岸へ行くと必ず見つかるようなものではありません。
海流や風向き、潮の満ち引きなどのタイミングが重なって波や風が運んでくれるので、出会えたら大変貴重なもの。また、薄くて割れやすい繊細さがありますので、きれいな状態で見つけることは稀です。そのことから、桜貝は「幸せを呼ぶ貝」とも言われ、拾ったらお守りとして身につけている人も多いようです。

これを書いている私は海がない奈良県に住んでいるのですが、海が近い街で生まれ育ったので、あたたかい季節になると海岸が恋しくなります。気持ちのいい朝に散歩するのが好きで、波の音を聴きながら潮風にあたって、お気に入りの貝殻や石を見つけてはうっとりと眺める。そんな時間をずっと大切にしてきました。

海岸には自然からの贈りものがたくさん転がっています。
絵の具やパソコンなどの機械では決して出せないような色やかたち。見つけるたびに彼らの旅路に思いをめぐらせます。きっと寄せては返す波にもまれたり、心地よい風にあたって色々な仲間と出会いながらこの海岸にたどりついたのかもしれない。そう思うと、まるで絵本の世界に飛び込んだような幻想的な空間が、小さな手のひらで広がっているような気分になります。

みなさんもぜひお近くの海岸で桜貝を探してみてください。出会えても、出会えなくても、楽しみを見つけにいった時間はきっと尊いもの。自然からこぼれおちたあたたかな贈りもの、みなさんのもとにも届きますように。

松下恭子
うつわ屋 店主・ライター
神奈川県出身、2019年に奈良市へ移住。
好きな季節は、春。梅や桜が咲いて外を散歩するのが楽しくなることと、誕生日が3月なので、毎年春を迎えることがうれしくて待ち遠しいです。奈良県生駒市高山町で「暮らしとうつわのお店 草々」をやっています。好きなものは、うつわ集め、あんこ(特に豆大福!)です。畑で野菜を育てています。
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