アジ

旬のもの 2022.05.13

この記事を
シェアする
  • twitter
  • facebook
  • B!
  • LINE

こんにちは、料理人の庄本彩美です。今日は、古くから日本人に食されていた魚であり、「味が良いから」その名で呼ばれるようになったとも言われる「アジ」についてのお話です。

瀬戸内海の近くに住んでいたこともあり、実家では魚料理がよく食卓に並んでいた。
ご近所さんが釣った魚をお裾分けしてもらう事も多く、母が台所で魚をさばく姿を度々目にしていた。新鮮な刺身などが食べられるのはとても嬉しかったが、さばくのも、片付けも大変そうだなぁと思いながら見ていたので、自分で料理するようになってからは、魚を買って料理する頻度は減っていた。

一人暮らしをしてから、友人にアジ釣りに連れていってもらったことがある。
「アジ釣りにはこれだ」と、友人が見せてくれたものは、私が想像していた釣り道具とは、少し違うものだった。釣り糸の先から順番に釣り針がいくつか付いていて、その上に小さな網カゴがある。
「アジはサビキ釣りっていう方法で釣るんやで。このカゴに餌を入れて、針を落とす。海の中で餌が落ちてきて、それをアジが食べに来て、針に引っかかるってわけ。」と説明してくれた。

初心者の私でも釣れるのだろうかと不安だったが、落とした針はすぐにひっぱられた。堤防の下で群れを成していた魚たちが我先にと餌に集まっている。
引き上げてみると、小さめのアジが数匹針に引っ掛かっている。友人も、針を落とすだけで次々とアジを釣りあげていく。
釣りといえば、針を遠くに飛ばして魚と力比べをしながらじりじりと…と想像していたので、ちょっと拍子抜けしてしまったが、釣れる楽しみが止まらず、気がつけばクーラーボックスは予定の量いっぱいになっていたのだった。

釣ったアジは、さばき方を教えてもらいながら料理することになった。
小さな豆アジは、手でさばけるという。アジのエラを持って引っ張ると、頭が残ったままワタも一緒に取ることができた。アジには敵から身を守るために「ゼイゴ」という尾の付け根にあるトゲ状の部分があるが、豆アジのゼイゴを触ってみると柔らかく、取らずにそのまま揚げることにした。小さいので、短時間でさくさく揚げられる。

大きめのものはアジフライにすることに。ゼイゴを取り、背開きの方法を教えてもらう。綺麗に開くことができると、なかなか嬉しいものだ。
「アジはさばきたてのものが美味しいから、スーパーで買う時も、できれば頭付きで身がふっくらした新鮮なものを選ぶといいよ」とも教えてもらった。

出来上がった南蛮漬けとアジフライを目の前にして、ぐうとお腹がなる。自分で釣って料理して、食べる魚はこれが初めてだ。
豆アジは頭からしっぽまでサクサクといただける。骨も柔らかい。

アジフライは、衣の中で身がふんわりとしていてとっても美味しい。これはアジなのか?と一瞬混乱するほどだ。アジは本来青魚だが、新鮮なものだと青魚とも白身魚ともいえぬ美味しいさを感じることができるのだという。
また「背開きにするのも、揚げもののコツやで」と友人は教えてくれた。
腹開きと比べて身が薄くなることで、均一に早く火が通るため、揚げすぎずにふんわりとした食感を保つことができるという。

「好きな魚は?」と聞かれてアジを挙げたことは一度もなかったが、アジにこんなポテンシャルがあるとは思わなかった。また、さばくことで美味しいアジを味わえるのなら、これからも挑戦してみようと思えた出来事であった。

アジは年中釣れる魚と言われるが、これからの季節が旬と言われ、夏の季語ともなっている。
釣るのも、さばくのも、アジは初心者にも優しい魚であるようだ。小ぶりのものなら、油調理も短時間で仕上がるため、きっと夏の調理にアジは活躍してくれるだろう。
また、アジフライにこだわり、その味を追求しているお店も多くあるようだ。魚をさばくのはちょっと…という人は、是非職人のアジフライを、あじわってみてほしい。

この記事をシェアする
  • twitter
  • facebook
  • B!
  • LINE

庄本彩美

料理家・「円卓」主宰
山口県出身、京都府在住。好きな季節は初夏。自分が生まれた季節なので。看護師の経験を経て、料理への関心を深める。京都で「料理から季節を感じて暮らす」をコンセプトに、お弁当作成やケータリング、味噌作りなど手しごとの会を行う。野菜の力を引き出すような料理を心がけています。

  • instagram
  • note

関連する記事

カテゴリ