伝統的なまちなみ

旬のもの 2022.05.18

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こんにちは。写真家の仁科勝介です。

市町村一周の旅で伝統的なまちなみに出会う機会は、少なくはなかっただろうと思っています。伝統工芸や伝統芸能に触れる機会もありましたが、ひとつひとつまちをがむしゃらに巡った当時、 “まちなみ”という目視できる存在は、旅を続けるには十分なほど印象深く、どこか圧倒されるものがありました。

あげればきりがないものの、5つの地域をまとめてみました。明確な基準はありませんが、今も懐かしく、心を支えてくれるような場所です。

青森県黒石市の中町こみせ通りです。黒石津軽家は近くに藩を構えていた弘前津軽氏の分家で、こみせ通りには江戸時代(藩政時代)からの面影が色濃く残されています。

岐阜県の飛騨高山や飛騨古川のまちなみも好きです。雄大な山々を走って辿り着いた先に、これだけの大きな規模で、賑わいがあったのだという迫力に驚かされました。

三重県亀山市の関宿は、東海道の宿場町です。交通の要衝だった江戸時代の光景は想像するしかできませんが、それでも懐かしく、体が反応するようだったことを覚えています。

島根県大田市の大森の町並みです。現在も大切に保存された場所であり、人々の暮らしがあります。鉱山の遺跡はもちろん、緑に囲まれた石州瓦の屋根は圧巻でした。

沖縄県渡名喜島です(1枚目の写真も)。白砂の道とフクギの並木に、赤瓦の古民家が並びます。日が沈み、フットライトに照らされる道を歩けば、静かな島の声をきいていました。

と、5つの場所を紹介させていただきました。ただ、全ての市町村を巡ったとしても、伝統的なまちなみの“伝”という漢字の、にんべんの一画目を書き始めたぐらい、まだまだ伝統的なまちなみをぼくは知りません。全国各地で独自のまちなみが形成され、そこにどれだけの人々の暮らしや人生があったのだろうかと思うと、理解をするにはあまりに膨大で、果てしなく感じられるのです。

一方で、その果てしなさを落ち着いて咀嚼していくと、山川草木、ありのままの美しい自然のみに限らず、“まちなみ”という人間の手によって築かれたものが、このちいさな日本という国においても、一度の人生では巡りきることができないほどに広がっている、ということも不思議で、感動的で、面白いのです。

個性豊かな、伝統的なまちなみが日本にたくさん残っているということを、誇りに思います。それが知らないほどに広がっている、ということもです。

写真:仁科勝介

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仁科勝介

写真家
1996年岡山県生まれ。広島大学経済学部卒。2018年3月に市町村一周の旅を始め、2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。2020年の8月には旅の記録をまとめた本、「ふるさとの手帖」(KADOKAWA)を出版。好きな季節は絞りきれませんが、特に好きな日は、立春です。

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