ミツバチやミンミンゼミは「飛ぶ」けれど、蛍は「舞う」なあと思っていたら、白鳥やコウノトリも舞うことに気づきました、写真家の仁科勝介です。
大学生になるまで、蛍とは疎遠な人生でした。親近感はあったけれど、実際に出会う機会がなかった。それが、学生時代に1年間、山奥の古民家に住んだときに、湿度の増した6月、目の前の小川で乱舞する蛍を見たときは、湧き上がる感動を覚えたものです。

思えば、蛍の輝きというものは、遥か遠い昔と変わりません。伊勢物語や源氏物語、そしてさまざまな和歌にも蛍が登場します。蛍雪の功という言葉も、蛍の光という歌も、みな、蛍が放つ光を知っています。
カエルやセミ、コオロギといった生き物たちの“鳴き声”も昔と変わりませんが、蛍に関しては「古来と同じ“光”を見ている」わけで、眼で見る輝きが、むかしの時代と通じているということを思うと、胸が高鳴ります。だから蛍たちが、人間の活動によって居なくなってしまうということは、一緒に歩んできた光を失うということですから、それは歴史にとって大きな損失だと、思うばかりです。

蛇足ですが、蛍の写真といえば、一面に蛍が舞っている写真が浮かびます。ただ、実際に撮影をすると蛍の光はものすごく弱いことに気づきます。スマホならほとんど写りません。蛍は日没後から数時間だけ出現するのが一般的ですが、日没直後の薄暗さが残っていなければ、前後の景色はほとんど写らないぐらいです。
その難しい条件でも分かりやすく、蛍のイメージを伝えるために、いまの写真にはいくつかの工夫が施されています。もちろん、数え切れないほどの蛍たちが舞っている場所も当然あるとは思うのですが、最近の蛍は光がちょっとだけ、増えすぎたような気もしています。

ですから、ぼくは蛍が一面に輝きわたる写真も好きですが、肉眼で見る蛍の光そのものがいちばん好きです。そこにはほんとうに、暗闇にちいさく浮かぶ微かな光があります。蛍の和歌が恋心としてよく詠まれたことも、この消えそうな光を感じてだと思うのです。
蛍は成虫になって僅か2週間で命を落としてしまいます。彼らが放つ光は、華々しく感じられますが、もっと、切ない気がしています。花火とは違って、音もなく、光も弱く、それでも意志を持って生ききろうとする姿。それは、写真以上の美しさです。
写真:仁科勝介

仁科勝介
写真家
1996年岡山県生まれ。広島大学経済学部卒。2018年3月に市町村一周の旅を始め、2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。2020年の8月には旅の記録をまとめた本、「ふるさとの手帖」(KADOKAWA)を出版。好きな季節は絞りきれませんが、特に好きな日は、立春です。
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