こんにちは、こんばんは。
ライターの栗田真希です。
やまびことは、あの山に登って「やっほー!」と大きな声で言うと返事のように声が返ってくる、みたいな現象のことです。
このやまびこ、現代では音の反響現象として知られています。音が山や谷にぶつかって跳ね返ってくる、というものです。音は振動です。ふつうに誰かと会話をしているとき、発した声(音)は空気を振動させて相手に伝わります。それが山や谷の斜面にその振動が届いたとき、ぶつかって音が跳ね返ってくるので、やまびこが起きたように感じるのです。

こうした現象を、昔の人びとは山の神の声だと考えていました。それは漢字の「山彦」という表記にも現れています。「彦」には「才徳の優れた男性」や「男性の美称」という意味があります。ちなみに彦の対義語は姫。男の神様のことを「彦神」と呼びます。
やまびこには、ほかにも解釈があります。妖怪の声としては「幽谷響」という漢字で「山彦」と同じく、やまびこと読みます。ちょっと恐ろしさのある字面で、妖怪として伝わっています。

やまびこは音が反響してくるという形のない現象なので、妖怪として「姿が見えないもの」とされていることもあります。ですが、江戸時代中期に活躍した画家・佐脇嵩之の描いた絵巻物『百怪図巻』や、それを参考にしたとされる江戸時代中期の画家・鳥山石燕の妖怪画集『画図百鬼夜行』には、幽谷響(やまびこ)の姿が残されています。
このふたりが描いた幽谷響(やまびこ)、なんだか珍妙な顔やポーズで、調べて画像を見つけたときに笑ってしまいました。犬とも猿とも言えない獣の姿をしています。妖怪だけどちょっとだけ、かわいいかも?

音の反響現象である「やまびこ」には古くからいくつもの解釈がされてきました。神様の声だと信じる人がいて、妖怪の声だと考える人がいて。そこには自然とむやみに対立することなく向き合ってきた日本人のこころやユーモアが感じられるなあ、と思いました。
今度山のなかで、やまびこを試すとき、わたしはどんな存在をイメージして大きな声を出すのだろう。神様か、妖怪か、それとも。みなさんはどうですか?


栗田真希
ライター
横浜出身。現在は東京、丸ノ内線の終着駅である方南町でのほほんと暮らす。桜をはじめとした花々や山菜が芽吹く春が好き。カメラを持ってお出かけするのが趣味。OL、コピーライターを経て現在はおもにライターとして活動中。2015年準朝日広告賞受賞、フォトマスター検定準一級の資格を持つ。
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