おなかの張りを改善する

旬のもの 2022.08.29

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お腹の張り。これは実は、心身の不調を確認するときの指標になります。お腹が張って苦しい状態を中医学では、「精神的なストレスなどが影響して、気のめぐりが滞ったため」と考えます。詳しく見ていきましょう。

“気”とは、体を隅々までめぐり、各細胞や組織を健全に動かす役割を担っています。気とは生理活動を営むエネルギーです。気が届かないと、ガソリンがなくなった車のように、各部は正常に動けなくなってしまいます。

気は常に巡って、滞りなく流れている状態が正常です。そうすることで、偏りなく体の各細胞や組織にエネルギーを与えて、動かすことができます。その流れをコントロールしているのが、“五臓の肝”です。この肝は、西洋医学が指す肝臓よりももっと広い概念で、自律神経系や情緒、筋や目、爪などと関連する機能です。中医学が指す胃腸は脾胃といいますが、この脾胃がうまく動くには、先出の、肝がコントロールする正しい気の流れが必要です。

ストレスが掛かり、情緒が乱れると、肝の働きが正常さを失ってしまい、気の流れのコントロールに支障がでてきます。すると気が、流れたり流れなかったり、少なかったり多すぎたりするようになります。そうなると体の各部の動きが安定せず、常に不安定な状態となります。筋肉は痙攣し、動悸がして呼吸が苦しかったり、お腹がはるようになったりします。肝は情緒にも関与するので、イライラしたり落ち込んだりと、こころも不安定になります。

その中でも特に脾胃は顕著に症状が出ます。脾胃の動きは、リラックスしているときによくなります。精神的なストレスが加わり、神経が過敏な状態になっていると、動きが悪化しガスがたまります。すると、お腹がはったり、下痢と便秘を繰り返し、オナラやゲップが多くなったりします。

こういった方は、胸、胸から脇にも張りが出易く、胸苦しさやつかえる感じがします。それらは、時間的な増減があり、ゲップやオナラで一時的に軽減します。そのほか、あちこちと移動する痛みが出たり、残便感や残尿感がでたり、排便・排尿がスムーズでなくなったり、呼吸がしづらくなったり、吐き気や咳が出たりする人もいます。

気の滞りを減らそう

気のめぐりが滞ってしまったときは、リラックスを心がけましょう。せかせか急ぐと、または急かされると状態は悪化するので、時間に余裕を持った行動をしましょう。楽しめる趣味などがある人は没頭できる時間をつくりましょう。

できればじっとしているより、体を動かすほうがいいでしょう。体を動かすことは気のめぐりを助けてくれるので、適度な運動で汗をかきましょう。体の側面や筋をしっかり伸ばすストレッチも良いでしょう。気がついたら深呼吸をするようにしてください。その際は、鼻からすった空気が背骨を通り、骨盤内に広がるイメージで、空気が体の中をめぐるように呼吸します。深呼吸はまずしっかり吐くことをお忘れなく。

肝の不調があり気の流れが滞っている人は、よく喋るという特徴もあります。しゃべるというのは気を巡らせる行為ですので、滞った気を流すために沢山お話したいのでしょう。お話しましょう。

薬膳では、香りがよいものが良いとされています。柑橘類やラベンダー、バラの香りが良いとされていますが、ご自身が心地よく感じる香りを使用してください。アロマでもボディオイルでも、ヘアオイルやピロースプレーなどでもなんでもいいです。コーヒーももちろん良いですが、飲み過ぎは興奮のもとなのでご注意くださいね。

気づまりになるまえに

ガスがたまるのは気の滞り。気の滞りが起こってから対策するよりも普段からストレスの発散を心がけた生活をすることが大切です。嫌な感情を感じても心に留めず受け流すことが一番の予防になります。おすすめは海や山など遠くを眺めることです。気を内にむけるのではなく、外にむける方法です。皆様お気に入りの気晴らし対策、なにか見つけておいてくださいませ。

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櫻井大典

国際中医専門員・漢方専門家
北海道出身。好きな季節は、雪がふる冬。真っ白な世界、匂いも音も感じない世界が好きです。冬は雪があったほうが好きです。SNSにて日々発信される優しくわかりやすい養生情報は、これまでの漢方のイメージを払拭し、老若男女を問わず人気に。著書『まいにち漢方 体と心をいたわる365のコツ』 (ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)など。

櫻井大典|ゆるかんぽう

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