秋は早寝早起き

旬のもの 2022.09.29

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「睡眠と養生」というと、「毎日早く寝て早く起きることが一番!」と思いますよね。まあ大体そうなんですが、中医養生では季節によって変化すると考えます。

例えば夏は、寝るのが遅くなっても早く起きるのが良いと言われます。逆に冬は、とにかく早く寝て、朝は日が昇ってから起きるのが良いとされています。これがなぜかと言うと、睡眠は太陽の動きに合わせて行うのがより自然で、人間も自然の一部と考える中医学では、心身のバランスを整えるのに重要だと考えるからです。

太陽というのは「陽気」の大元です。陽気とは「活動のエネルギー」です。なので、日が沈むのが早く昇るのも遅い冬は、日照時間が少ないので早寝遅起きをして、活動のエネルギーを消耗しないようにします。日が沈むのが遅くて昇るのが早い夏は、しっかり朝から陽の光を浴びて陽気を蓄えるために、就寝が遅くなってもいいけど、早くおきて活動せよというわけです。

ではこの時期、「秋の養生」ではどうでしょうか。

秋は早寝早起きを心がける

秋は昼間が短く、夜が長いですね。なので「早寝遅きがよい」と言いたいところですが、秋の朝は冬よりも早く来ます。この時期は、減っていく日照時間を有効に活用するためにも、早寝早起きをしましょう。そうして十分に休息をとることが、夏の間つかれた体を癒やすことに繋がります。

秋の夜長といいますが、夜ふかしは体調不良の元です。夏の疲れは冬に持ち越さないことが重要なので、快適に眠れる秋にしっかり休んで回復させましょう。中医養生的おすすめの就寝時間は、23時頃。本来は23時には熟睡できていることが理想です。

23時就寝というのは「子午流注(しごるちゅう)」という考えが元になっています。子午流注では24時間を2時間毎に12等分し、それぞれの時間帯に活発に働くとされる臓腑を表しています。

子午流注図

子午流注では23時から1時までは「胆」の時間。そして1時から3時までは「肝」の時間と考えます。この時間帯にそれぞれの臓腑が活発に仕事をする時間として考えるのです。

肝や胆、その他の臓腑は、解剖生理学的な肝臓や胆嚢、その他の臓腑とは違う、中医学固有の概念です。胆は消化吸収に関連し、かつ、決断力に関連する場所で、肝は体の栄養となる「血(けつ)」を貯めるタンクで、同時に情緒や自律神経系をコントロールしています。なので、消化を促し体力の回復を図り、精神を安定させるためには、23時から3時までに熟睡していることが重要と考えるわけです。

中医学の秋は、8月7日の立秋からです。秋は収斂(しゅうれん)の季節といわれます。収斂とは収束と同じ意味で、「おさまりがつくこと」という意味です。植物は、春に芽吹き、夏に栄え、そして秋には種を残して落葉します。その種は冬を越し、また春に芽吹くのですが、秋は“種”という成果が大事になる季節です。

この時期は発表会や運動会がありますね。秋は春〜夏にかけて練習してきた成果を発表する場、まさに収穫の時期です。この時期の養生では、出来なかったことを悔やまず、あれやこれやと活動的にならずに、出来たことに目をむけて穏やかに過ごすのが良いとされています。

秋はまた、悲しみの季節とも考えられています。これは「五行論」という理論に由来するのですが、それによると、秋は乾燥の季節で、呼吸器系や肌にトラブルを起こしやすく、気分は悲しみやすいと考えます。また、精神がしゃきっとせず、物悲しさの他、物忘れや、思考力の低下も起こりやすいとされます。

ちょっと気分が塞いだり、ケアレスミスが増えたりするのは、一部は秋のせいかもしれません。そんなときはしっかり深呼吸して、適度に体を動かしましょう。呼吸と運動が同時に出来る太極拳やヨガのようなものが良いですね。この時期の倦怠感には、山芋、長芋、自然薯などがおすすめです。元気の元である気を補う力が高く、消化もしやすく、食欲も回復させます。ただし、とろろのように、生で食べないで加熱して食べるようにしてくださいね。

暑さ寒さも彼岸までと言われます。秋分を過ぎると少し涼しくなり、より過ごしやすくなるでしょう。日々の生活に養生の考えをご自身が出来る範囲で取り入れて、これからの季節に備えていきましょう。

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櫻井大典

国際中医専門員・漢方専門家
北海道出身。好きな季節は、雪がふる冬。真っ白な世界、匂いも音も感じない世界が好きです。冬は雪があったほうが好きです。SNSにて日々発信される優しくわかりやすい養生情報は、これまでの漢方のイメージを払拭し、老若男女を問わず人気に。著書『まいにち漢方 体と心をいたわる365のコツ』 (ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)など。

櫻井大典|ゆるかんぽう

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