とんぶり

旬のもの 2022.09.30

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こんにちは。料理人の川口屋薫です。
今日のお話は、「とんぶり」です。

とんぶりは、ホウキギの成熟果実を加工した食べ物です。
直径1㎜から2㎜の粒状で、濃い緑色をしている見た目とプチプチした食感が世界三大珍味のひとつ、高級食材の魚卵に似ていることから、「畑のキャビア」とも呼ばれています。

とんぶりの名前の由来は、秋田の県魚ハタハタの卵「ぶりこ」に似た形状と、唐から伝わったことを意味する「とうぶりこ」が省略された秋田の方言説が有力とされています。

秋田県の北部にある大館(おおだて)市では、江戸時代からホウキギの古い呼び名「帚木(ははきぎ)の実」を食べる習慣があったといわれています。
元々、ははきぎの実は乾燥させて、平安時代の貴族に生薬「地膚子(じふし)」として用いられた歴史があり、幾度も凶作に襲われた江戸時代、この地膚子を食べ物にし、命を繋いだそうです。

今もとんぶりは秋田の人達によって作り続けられています。弁当箱など曲げわっぱの原料になる秋田杉に囲まれ、清流米代川が貫流する盆地・大館市は、風が吹くと落ちやすいホウキギ(箒木)の実を、山々が強風から守ってくれると言います。

とんぶりは秋に収穫を迎え、天日干しにした実を加熱加工します。
硬い外皮を剥くために、釜で煮た後、湯温で長時間置き、ふやけた外皮を取り除きます。その後は、何度も地下水で実を洗い、不純物を取り除き、重石で脱水処理をすると、鮮やかで深い緑色をした粒になります。

10月からは新物のとんぶりが始まります。秋田以外の購入方法は、秋田のアンテナショップ、ネットで手に入ると思います。
納豆やとろろと合わせたり、おにぎりにまぜるのが、地元のおすすめの食べ方です。モチモチ、ネットリ、シットリした食材と合わせると、とんぶりのプチプチ食感が際立ちます。

今日のレシピはイタリアで、ホームパーティの前菜でよく使われるスモークサーモンを使います。よかったら作ってみてください。

最後にホウキギのお話を。
ホウキギの漢字は箒木です。茎は干して、掃除に使う箒の材料になります。
昔は全国でホウキギを育てて、箒を作ったそうです。

ホウキギの種類に鑑賞用のコキアがあります。
コキアはふわふわした葉でまんまるな形もあり、秋が深まる頃は、紅葉して真っ赤になります。
少し前にコキアパークに行ってきました。とんぶりを少し身近に感じたような気持ちになり、かわいいコキアに癒されました。

とんぶりスモークサーモン

材料(2人前)

•スモークサーモン 6切れ
•クリームチーズ 適量
•とんぶり 約大さじ2
•バジル 3枚
•レモンの搾り汁適量
•オリーブオイル 適量

作り方

①スモークサーモンの上にバジル½枚、クリームチーズを塗り、とんぶりを乗せて、クルクル巻きます。
②皿に盛り、とんぶりを少しのせて、レモンの搾り汁とオリーブオイルを少しかけたら完成です。
(飾りは園芸店で買ったホウキギの葉です)

※ポイント
とんぶりはそのままでも召し上がれますが、クエン酸が入っているので、細かい目のザルにとんぶりを入れて、上から熱湯をかけるか、1分間水につけてから、水気を切ると、酸味が抜けて食べやすくなります。

写真:川口屋薫

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川口屋薫

料理人
Le btagev(ルブタジベ)代表。大阪出身。料理人。珍しいやさいの定期便をしています。風薫る季節5月が過ごしやすくて一番好きです。イタリア在住中、ヨーロッパ野菜に恋し、日本の野菜が恋しくなったのをきっかけに野菜に関わる仕事をしています。 趣味 囲碁

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