こんにちは、ライターの高根恭子です。
紅葉シーズン真っ盛り。イチョウ、カエデ、桜の木々たちが次々と秋色へ染まっていきますね。
さて、前回は「桜紅葉(さくらもみじ)」というテーマで紅葉のことを書きましたが、今回は「柿紅葉(かきもみじ)」のお話です。
柿紅葉とは名前の通り、晩秋になって柿の木の実が熟する頃に葉っぱがうつくしく色づくことを言います。
柿紅葉の色は、桜のように赤みの混じった黄色やオレンジ色に染まりますが、柿と桜、見た目に大きく違うのは葉っぱの大きさです。柿の葉のほうが大きくて、厚みもしっかりあります。かたちは卵型や楕円形をしており、表面はつやつやと光沢があります。
葉っぱの面積が広いからか、紅葉すると遠くから見ても存在感があります。しなやかに伸びる枝の先にはまぁるい柿が実り、まさに「風情」という言葉がぴったりな佇まいで、毎年うっとりと見惚れてしまいます。
さらに、柿の葉は食用としても楽しまれてきました。
なかでも一番有名なのが、「柿の葉茶」です。
柿の葉にはビタミンやミネラルなどの栄養素がたっぷり含まれているので、昔から健康茶としてくすり代わりに重宝されてきました。さらに、お酒に漬け込んで薬草酒にしたり、お風呂に入れて天然の入浴剤にしたりと生活のあらゆるシーンで使われてきたのだそう。柿の実だけではなく、柿の葉まであますことなく使う。先人たちの知恵はすごいですね。
また、「柿の葉寿司」も忘れてはいけません。
私は柿の産地・奈良県に住んでいるのですが、柿の葉寿司は奈良みやげの定番!と断言できるほど、昔から愛されているソウルフードです。
柿の葉にはポリフェノールの一種であるタンニンが多く含まれているので、抗菌・抗酸化作用にすぐれています。食材を乾燥から守るだけではなく保存性も高いので、海なし県の奈良人にとって、熊野の海で水揚げされたお魚を包み込むのにぴったりでした。
お魚を塩でしめて切り身にし、一口大のシャリにのせて柿の葉で包み込む。柿の葉寿司は、貴重な栄養分を得るための知恵が詰まった食べ物なのですね。
11月上旬から12月には、色づいた葉っぱを使用した「紅葉柿の葉寿司」も登場しますが、毎年すぐに売り切れてしまうほどの大人気商品です。
そんな柿の葉寿司、私も大好物でよく食べるのですが、寿司を食べる前に柿の葉を少しずつ剥がしていくことが毎回楽しいなぁと思います。いつも鯖やシャケ、鯛など色々なネタが入っているものを選ぶのですが、剥がすたびに「あ、シャケだ!」「鯛が当たった!」など、いちいちリアクションしながらよろこぶことが楽しい時間なのです。
ひとくちサイズのお寿司を口に運ぶと、柿の葉の香りがふんわりと鼻に抜ける。お魚の旨みと柔らかく握られた酢飯が口のなかに広がって、思わず顔がほころんでしまいます。
観賞する楽しみも、食べるよろこびも、ふんだんに届けてくれる柿の葉。
今年も大きな葉っぱが色づくのを楽しみながら、柿の葉寿司を味わいたいなぁと思います。
高根恭子
うつわ屋 店主・ライター
神奈川県出身、2019年に奈良市へ移住。
好きな季節は、春。梅や桜が咲いて外を散歩するのが楽しくなることと、誕生日が3月なので、毎年春を迎えることがうれしくて待ち遠しいです。奈良県生駒市高山町で「暮らしとうつわのお店 草々」をやっています。好きなものは、うつわ集め、あんこ(特に豆大福!)です。畑で野菜を育てています。
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