こんにちは、こんばんは。
ライターの栗田真希です。
わたしは幼いころ、「小春日和」という言葉は春のことを指すのだと勘違いしていました。小さい春、つまりまだ肌寒い春先のことだろう、と思っていたのです。
小春日和は初冬の季語。晩秋から初冬にかけての、春のように穏やかで暖かい日のことです。そんな小春日和が続くと、草木も「春が来た!」と勘違いして、花を咲かせることがあります。これが「帰り花(かえりばな)」です。
桜やつつじ、桃などの草木が、咲くはずのない季節に花開く「帰り花」。「返り花」とも書き表し、そのほか「忘れ花」とも呼ばれます。

みなさんは、帰り花を見かけたことはありますか?
数年前、わたしはひどく落ち込んでいたときに、川沿いの道で帰り花を見たことがあります。あれは桜の木でした。花が咲くといっても、一部の枝にぽつぽつと花がついている、という感じでしたが、とても感動したのを覚えています。
暗い気持ちになるできごとに直面したとき、そんな憂鬱な瞬間がこの先も続いていくのだと錯覚してしまうことがありました。ずっとトンネルから抜け出せないように思えてしまうことが。そんなときに目に飛び込んできた帰り花は、「大丈夫、きみにも春は来るし、花は咲くよ」というメッセージのように感じたのです。
普通の季節の営みでは見かけない花だからこそ、幸福感がお腹の底から迫り上がってきました。

帰り花の解釈は、人によってさまざまあるのではないでしょうか。「うっかり季節を間違えて咲いちゃった花」と捉えるとひょうきんなようにも思えますし、「寒さが本格化する直前に数輪咲く花」とすれば儚い美しさに見えます。
わたしは「帰り」という言葉を組み合わせたところに、あたたかさを感じました。これから小春日和が過ぎ去って、苛烈な寒さの冬が来る。けれども大丈夫、また季節はめぐって、あたたかい空気が満ちて、花々のつぼみはほころび、春が帰ってくるから。帰り花は、そんなふうに春をひととき思い出させてくれる、幸運な花だと思っています。
もし帰り花を見かけたら、みなさんぜひSNSで教えてくださいね。


栗田真希
ライター
横浜出身。現在は東京、丸ノ内線の終着駅である方南町でのほほんと暮らす。桜をはじめとした花々や山菜が芽吹く春が好き。カメラを持ってお出かけするのが趣味。OL、コピーライターを経て現在はおもにライターとして活動中。2015年準朝日広告賞受賞、フォトマスター検定準一級の資格を持つ。
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