こんにちは。科学ジャーナリストの柴田です。
ちょうど今頃の1月下旬から2月初旬は、日本では一番気温が低い時期だそうですね。寒い季節のバードウォッチングでは、一日中寒風にさらされてすっかり体が冷えてしまいます。そんなときに何よりも嬉しいのは、コンビニエンスストアの熱いコーヒー。駐車場に車を止め、車内でコーヒーを飲んで体を温めているとき、ふと、窓の外に目をやると、車の間をちょこまか走りまわる白黒の鳥が見えます。ハクセキレイです。

ハクセキレイは、全長21cmほどの尾羽が長いスマートな小鳥。日本では九州以北で1年中見られ、南西諸島では冬鳥です。セキレイ類は、川にいる鳥のイメージがありますが、ハクセキレイは河原はもちろん、海岸や農耕地、公園、住宅街、銀座のような大都会の路上でも見かけます。森の中以外ならば、どこにでもいる感じです。

そして、なぜか駐車場でよく見かけます。車が来ようが人が近づこうがあまり気にする様子もなく、尾羽を上下にふりふり動かしながら走り回っているわけですから否応なしに目立つ存在に。そんなことから、「駐車場の鳥」なんていうキャッチフレーズで呼ばれることもあります。

それにしても、ハクセキレイはどうして駐車場にいるのでしょうね。その答えは食べものがあるから。駐車場を歩いている様子を観察してみると、ときどき地面に落ちているものをついばんで食べているのがわかります。ハクセキレイの主な食べものは昆虫や小動物で、駐車場には車にぶつかって死んだ虫が落ちているので、それを食べているのです。
また、スナック菓子やパンなども大好き。コンビニの駐車場には、そんな食べこぼしがよく落ちていますから、レストランみたいなところなのでしょう。歩きながら落ちている食べものを見つけては、パクッとついばんで食べる。そんなことをしに駐車場にやってきているのです。

さてハクセキレイは、スズメやカラス、ハトと同じくらい街中でもごく普通に見られる鳥です。ところがこの光景、昔の鳥類学者の先生が見たら、おそらく目を丸くして驚くはずなんです。というのも、昔は街中に一年中いることがなかったから。それどころか、1930年代までは夏の繁殖期は北海道限定の鳥で、関東以南は冬期だけに見られる冬鳥でした。

それがどうしたことか、1955年頃には東北地方でも繁殖をはじめ、1970年代になると関東地方、1990年代には九州へと繁殖地がどんどん南下し、ほぼ全国で一年中見られる鳥になったのです。なぜ、繁殖地が南へ広がったのか、その理由はわかっていませんが、もしかしたら、北へ帰らなくても子育てができることに気がついちゃった鳥がいたのかもしれないですね。

昼間は、1羽か2羽で街中のあちこちを走り回っているハクセキレイですが、夜はどこにいるのでしょうか? じつは夜も街にいて、駅前の繁華街やショッピングモールの街路樹やビルの看板の裏などに集まって寝ています。鳥が寝る場所を「ねぐら」といいますが、夕方、ねぐらがある繁華街で待っていると、「チチン、チチン」と鳴きながら四方八方からハクセキレイが飛んでくるのが見えます。そして、すぐには街路樹には行かずに近くのビルの屋上にとまります。おそらく安全を確かめているのでしょう。

私が観察しているねぐらは、多いときに350羽くらいになりますから、屋上の上はいつしか待機するハクセキレイだらけになります。そして、1羽が街路樹へ降り立つと、堰を切ったように他の鳥も続き、街路樹へとまりはじめます。
でも、そうすんなりとはいきません。たいていはとまる枝を決めるのに何回かやり直すので、右往左往する鳥たちが乱舞し、おまけに「ピュルピュル、チチン」と鳴きながらなので、ものすごく賑やかな状況になります。たまたまこの場面に出くわした通行人が、いったい何事かと呆然と眺めていることもしばしば。そんな大騒ぎが毎日繰り返されているわけです。そして、いつのまにか落ち着いて、くちばしを背中の羽毛に差し込み丸くなって寝てしまいます。

ハクセキレイのねぐらは、たいていが人通りが多い賑やかで明るい場所にあります。なかには手が届きそうな低い枝にとまっている鳥もいて、人が怖くないように見えます。ところが、カメラのレンズを向けるとさっと警戒の姿勢をみせるので、まったく気にしていないわけではありません。鳥に関心がある人とない人を見分け、いつも人間の動きを観察しているのでしょう。都会で生きていくためには、このしたたかさが大切なのです。
写真提供:柴田佳秀

柴田佳秀
科学ジャーナリスト・サイエンスライター
東京都出身、千葉県在住。元テレビ自然番組ディレクター。
野鳥観察は小学生からで大学では昆虫学を専攻。鳥類が得意だが生きものならばジャンルは問わない。
冬鳥が続々とやってくる秋が好き。日本鳥学会会員。
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