こんにちは。科学ジャーナリストの柴田です。
今回は鳥界のスピードスターといわれるハヤブサを紹介しましょう。
ハヤブサは、カラスくらいの大きさで、広げた翼は1mくらいあります。かつてはタカの仲間と考えられていましたが、遺伝子を調べるとタカよりもむしろインコに近い仲間であることがわかり、今では独立したハヤブサ目に分類されています。このことから、ときどきハヤブサとインコは同じ仲間と言われることがありますが、これは大きな誤解です。

タカよりもインコの方が類縁関係が近いというだけで、まったく違う仲間ですからご注意ください。ハヤブサは、飛んでいる獲物(主に鳥)を鋭い爪がはえた脚で捕らえる鳥なので、同じような習性を持つタカと体つきが似ているのです。要するに他人のそら似というわけです。

ハヤブサといえば、ものすごいスピードで飛ぶ鳥として有名です。実際、飼っているハヤブサに計測器をつけて実験したところ、急降下では時速380km以上を記録したとか。ただ、これは特別に速い記録みたいで、普通は時速150~200kmくらいじゃないかということなのですが、それでも驚くほどのスピードには違いありません。

私も実際に何度かハヤブサの急降下を見たことがありますが、ぴゅーっとものすごい速度で落下するので、いつもあっけにとられてしまいます。さすが時速320kmで走行する新幹線E5系の愛称になっただけのことはありますね。ただし、こんな速度がでるのは急降下しているときだけで、水平飛行では最高速度は110kmくらいだそうです。
名前は有名でも、実際にハヤブサの姿を見たことがある人は少ないかもしれません。しかし、それは見えていないだけで、けっして珍しい鳥ではないんです。
北海道から沖縄まで日本全国に分布し、生息環境も海岸から山地、市街地、農耕地などあらゆる場所で見られます。英名はPeregrine Falconといい、このPeregrineは「放浪する」という意味。その名の通り、とにかく神出鬼没な鳥で、思わぬ場所で飛んでいる姿を目にすることがあります。世界的にも、ハヤブサがいないのは極端に寒い場所や乾燥地くらいで、鳥類で最も広範囲に生息している鳥のひとつでもあるのです。

いろいろな場所に出没するハヤブサですが、それでも特によくいる場所があります。それは海岸の崖。とくに岬の突端にある崖の岩の上にはよくとまっています。そんな場所は、なにしろ見晴らしが良いですから、獲物を見つけるには最適な場所なんです。岩の上にとまって眼下を通過する鳥を待ち伏せし、見つけるやいなやロックオン。急降下して捕らえてしまいます。

そんな海の崖にいるハヤブサを近頃は都市のビル街やタワーマンションでも見ることがあります。ハヤブサにとってビルは崖と同じで、見晴らしが良いため狩りをするのにぴったり。おまけに街には、獲物として最適なドバトがたくさん棲んでいます。ビルの屋上にとまって待ち伏せし、下を通過するドバトを見つけると、ロックオンして急降下! いとも簡単に獲物が手に入ってしまう。それがハヤブサにとってのビル街なのです。
ハヤブサにとって、ビルは子育ての場でもあります。本来は断崖絶壁の岩棚に巣をつくって子育てをするのですが、ビルのテラスでも子育てをするハヤブサがいるのです。3月の今頃は、ちょうど子育てをはじめる時期にあたり、営巣するビルの近くでは、縄張りを守る親鳥の姿をよく見るようになります。

ただし、ビルがあればどこでもハヤブサが子育てをしているわけではなく、現在は石川県金沢市や新潟県新潟市、大阪府泉大津市などが知られています。なかでも泉大津市のホテルでは2004年から繁殖が続いていて、2021年までに合計50羽が巣立ったといいます。また、金沢で巣立ったハヤブサの子どもが、新潟県庁のビルで繁殖したことも足環で確認されていて、やはり都会生まれは都会にということなのでしょう。

じつはビルで繁殖するハヤブサがいるのは、日本だけではありません。カナダやアメリカ、イギリスなどの大都会のビルでも1970年代から繁殖していることが知られています。都会育ちのハヤブサがどんどん誕生すると、これからはもっと身近にこのかっこいい猛禽類が見られるようになるかもしれませんね。


柴田佳秀
科学ジャーナリスト・サイエンスライター
東京都出身、千葉県在住。元テレビ自然番組ディレクター。
野鳥観察は小学生からで大学では昆虫学を専攻。鳥類が得意だが生きものならばジャンルは問わない。
冬鳥が続々とやってくる秋が好き。日本鳥学会会員。
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