だんだんとあたたかくなってきて、季節はすっかり春になりました。冬の間眠っていた花たちもポコポコと咲き始め、景色に彩りが戻ってきたようです。
その中でもひときわ鮮やかな色合いで咲いているのは「椿」の花。
紅、白、ピンクと彩り豊かな花の色を艶やかな葉っぱが引き立てていて、歩いているとハッと目がいってしまいます。
椿はツバキ科の常緑高木。名前の由来は、葉が厚く、光沢があるので「艶葉(つやば)の木」や「光沢木(つやき)」が転訛して「つばき」になった、または連なって咲くところから「つらつら椿」とよばれ「つらつら」が詰まって「つらき」から「つばき」になった..など色々な説がありますが、いずれも花より葉のうつくしさに注目して付けられた名前だということがわかります。

そして今日のテーマ「五色椿(ごしきつばき)」は、さらなる彩りでたのしませてくれる椿の品種です。
五色椿の最大の特徴は、花の色。
紅、白、ピンクの花々が、色々な模様を描きながら咲き誇ります。ひとつひとつの花をよく見ると濃淡や線の太さが少しずつ違っているので見ていて飽きません。

特に有名なスポットが、奈良県奈良市白毫寺です。東大寺開山堂の糊こぼし、伝香寺の散り椿とならぶ「奈良三名椿」の一つで、3月下旬〜4月頃にかけて咲きます。
なかでも一番存在感を放っているのが、高さ約5メートル、樹齢400年以上の大きな椿の木で、奈良県指定天然記念物にも選ばれています。
この古木は、かつて興福寺の塔頭寺院である「喜多院」にあったものを江戸時代にこの地に移植したと言われていて、400年経ったいまでも毎年立派な五色椿を咲かせ、花見客をたのしませています。

そもそも花は、「満開」のときや、「散り際」がうつくしいとよく言われます。
しかし、五色椿をインターネットで画像検索してみると地面に落ちた花びらの写真が数多く出てくるのです。これは「散り椿」と呼ばれ、花びらが一片ずつ散るように落ちていくのでこの名前がついたと言われています。鮮やかな色を保ったまま散る潔さから、別名「武士(もののふ)椿」とも付けられているそうです。
長く生きていると、うまくいくときやいかないときが交互にやってくることがあります。うまくいかないときが続くと「あのころはよかったなぁ..」なんて、過去にすがりたくなることもしばしば。いいことは長くは続かないのかもしれない。けれども、花ひらく時期が終わって地面に落ちてしまっても、鮮やかさは枯れずに輝き続ける。また来年、同じ時期に花が咲いて、私たちを楽しませてくれる。

人の営みと椿の花が重なるようで、感慨深い気持ちになりますね。
五色椿、みなさんのお近くでも見られるでしょうか。ぜひ近所を散歩して見つけてみてくださいね。
きっと、散ったあとでもうつくしさは変わらずに、私たちの道標になってくれることでしょう。


高根恭子
うつわ屋 店主・ライター
神奈川県出身、2019年に奈良市へ移住。
好きな季節は、春。梅や桜が咲いて外を散歩するのが楽しくなることと、誕生日が3月なので、毎年春を迎えることがうれしくて待ち遠しいです。奈良県生駒市高山町で「暮らしとうつわのお店 草々」をやっています。好きなものは、うつわ集め、あんこ(特に豆大福!)です。畑で野菜を育てています。
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